書附かきつけ)” の例文
お葉は正面の寒水石かんすいせきの売台の前へ往って、そこから小さな書附かきつけって来て天風の前へ置いた。天風は五十銭銀貨を三つばかり置いてちながらだめを押した。
文妖伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
御考慮下さらなければね。何か証明の方法がおありだとよいのですがな……何か書附かきつけひとつでも……
さて御料理番おれうりばん折入をりいつて、とやせむかくやせむと評議ひやうぎうへ一通いツつう獻立こんだて書附かきつけにして差上さしあげたり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ところが、この女地主の手許てもとには、そんな名簿の書附かきつけなどは何ひとつなく、彼女は殆んど全部そらで憶えていた。そこでさっそく彼は、老婆に一々その名前をあげさせることにした。
捻紙こよりでぎり/\巻いてある屋根板様やねいたようのものを取出し、捻紙を解き、中より書附かきつけを出し、ひらいてにやりと笑い、又元の通り畳んで、ぎり/\巻きながら、彼方あちら此方こちらへ眼を附けていますから
そうして手当てあてとして年金百円を給すというもう一枚の書附かきつけと二枚……これで一同は帝室技芸員という役を拝命したのだということは分りましたが、さて、その役目がどんなことをするのか
若旦那のお払いとて貸座敷より書附かきつけの到来したる例は、世間に珍しからず。
学者安心論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
結婚届に印を押してくれと云ふことだつたから、良人をつとの名や生月せいげつを書いて印を押した。原籍地には大字おほあざから小字こあざまであるのであるから私が覚えて居る筈もない。書附かきつけを見ながら書いたのである。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
一切の事は、追って書附かきつけにして、親署してつかわす。
配り願書をぞしたゝめける其文に乍恐おそれながら書附かきつけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
下人げにんより書附かきつけ受取うけとりてむ。
だう書附かきつけには故将堂こしやうだうとあり、おほきわづか二間四方許にけんしはうばかり小堂せうだうなり、本尊ほんぞんだにみぎごとくなれば、此小堂このせうだう破損はそんはいふまでもなし、やう/\にえんにあがりるに、うちほとけとてもなく
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今日直ぐに書附かきつけ取替とりかわして美代吉だけを連れてきたいが御得心ごとくしんかえ
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
書附かきつけ下人げにんかへしながら。