更迭こうてつ)” の例文
引込みの大事なのは、花道の弁慶と、内閣の更迭こうてつのみではない。人間の世には戸籍のない化け物でさえも、引込みの時間が肝腎である。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
昨日のは今日のとなり、昨年のは今年のとなることは、内閣の更迭こうてつごとに起こる事実に照らしても分かるくらいである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
市指定の汲取人は既に何人か更迭こうてつし、長続きがせず、遂にトラックを有して居ることのために衛生舎に指定されたわけである。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
真木大将は辞任をがえんじなかったが、統制派の圧力に押されて結局、退陣を余儀なくされた。この更迭こうてつは皇道派を激怒させた。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
社の幹部にも更迭こうてつがあった。新聞の編集ぶりも一新した。わたしは今までよりも忙がしい身体になった。またその上に一つの事件が出来しゅったいした。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
が、守備隊の兵の中には、この更迭こうてつに不満で不穏な態度を見せる者があった。何処どこから聞いたか、新任の沈大佐が苛烈な男だという噂に怯えたのだ。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
三月末から四月にかけて弾正台の人事更迭こうてつが行われ、五月九日付で兵部大丞黒田清隆が北海道開拓使次官に転任するのは、大久保利通の善後処置であったが
黒田清隆の方針 (新字新仮名) / 服部之総(著)
それや余りな御偏見でしょう。——順なれば、いまのみかど後醍醐は、御位みくらいにはないはずです。大覚寺統と持明院統と、御位みくらいは一代がわりに更迭こうてつの約束でした。それを
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
斯様かようにして、何の造作もなく新旧警視総監の更迭こうてつが行われ、とりすました明智小五郎は、本物の総監を積み込んだ人力車を従えて、いずこともなく立去ったのである。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
金融界のいぬいの手輩としてN・R漁業権を背景として、政党と政党の対立に山師の貫祿を見せた彼も、内閣が更迭こうてつすると疑獄事件のうずのなかに、不治の病を発してしまった。
大阪万華鏡 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
沖縄に於ては古来主権者の更迭こうてつが頻繁であったために、生存せんがためには一日も早く旧主人の恩を忘れて新主人の徳をしょうするのが気がきいているという事になったのである。
沖縄人の最大欠点 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
「九州とは遠いね。この間更迭こうてつがあったんだから、こゝへ来ようと思えば来られたのに」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
知事は下山すると、直ちに部下に命じて、分署の警察官を更迭こうてつし、あらたに俊秀を入れた。
霧の蕃社 (新字新仮名) / 中村地平(著)
昭和十年頃は、私は内閣ないかくの法制局長官であった。その頃の制度せいどは今と違っていて、法制局長官は相当要職ようしょくと考えられ、内閣更迭こうてつの場合には法制局長官の人選が相当問題になっていた。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
まるで、かびえるとでも思ってるようだ。今度も多分、室長の更迭こうてつというわけだろう。彼が出て行くのは、他のものが出て行った、あれと変わりはない。ただ、いのほど、早く出て行く。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
古来の政界の改造がすべて甲の官僚主義者と乙の官僚主義者との更迭こうてつ以外に何らの意味もなく、藤原氏の独占していた政権が平氏に移り、平氏がこれを源氏に奪われ、北条、足利、織田、豊臣
選挙に対する婦人の希望 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
従ってそれは単なる破壊や暴動とちがうし、単なる政権の更迭こうてつやクーデターとも異なる。単なる国王の放逐ほうちくだけをもって「人的革命」とか「易姓えきせい革命」とかいうが、それだけでは真の革命ではない。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
市長更迭こうてつの表裏
この年の十月には政府に大更迭こうてつがあって、大隈重信おおくましげのぶが俄かににくだった。つづいて板垣退助らが自由党をおこした。
有喜世新聞の話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)