智謀ちぼう)” の例文
高座こうざ御簾みすをあげて、こういった家康は、ときに、四十の坂をこえたばかりの男ざかり、智謀ちぼうにとんだ名将のふうはおのずからそなわっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
屹度きつと持參ぢさんこと、とふ……けだ發會はつくわい第一番だいいちばんの——おたうめでたうござる——幹事かんじとんさんが……じつ剩錢つりせんあつめる藁人形わらにんぎやうよろひせた智謀ちぼう計數けいすうによつたのださうである。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二氏のごときはまさしくこの局に当る者にして、勝氏が和議わぎを主張して幕府をきたるは誠に手際てぎわよき智謀ちぼうの功名なれども、これを解きて主家の廃滅はいめつしたるその廃滅の因縁いんねん
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
さすが、甲州流こうしゅうりゅう軍学家ぐんがっか智謀ちぼうのたけた民部みんぶといえども、この急迫きゅうはく処置しょちには、ほとんど困惑こんわくしたらしく、憂悶ゆうもんの色がそのおもてをくらくしている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つつしんで筆鋒ひっぽうかんにして苛酷かこくの文字を用いず、もってその人の名誉を保護するのみか、実際においてもその智謀ちぼう忠勇ちゅうゆう功名こうみょうをばくまでもみとむる者なれども、およそ人生の行路こうろ富貴ふうきを取れば功名を失い
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
滝川たきがわ攻めにかかった秀吉ひでよしは、あの無類むるい根気こんきと、熱と、智謀ちぼうをめぐらして、またたくうちに、亀山城かめやまじょうをおとし、国府こうの城をぬき、さらに敵の野陣や海べの軍船をきたてて、一益かずますの本城
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かような智謀ちぼうは、あなたのような清純なお人には、分らぬままがむしろよい。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「村重ずれの智謀ちぼうちるなどとは、智者らしくもない」とも呟いた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)