易々やす/\)” の例文
「それほどの男が、少々身體が不自由でも、腹帶も自分で締め直せるといふのに、女子供に易々やす/\と絞め殺される筈はない」
彼れが我身に覚えも無き事を易々やす/\と白状して殆ど裁判を誤らしめんとするに至りし其不心得を痛く叱るに彼れ屡々しば/\こうべを垂れ
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
そして、その目的が充分に達せられた。その上に、それは、多少なり興奮してゐた一同の頭を一遍に和らげ、軽く易々やす/\とした暢気のんきな気持ちにさせた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
しかし一夜が明ければX—新聞は依然として朝まだきの郵便箱を訪問に来るし、木札はぎとられ、釘は易々やす/\と曲げられ、へいには無惨な穴が開いてゐた。
姉弟と新聞配達 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
卓一はそう易々やす/\と信造の遺産が手に這入はいると思っていなかったので——信造が結婚すればそれっきりですからね。
青服の男 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
あくうらに有者はてんこればつあくほかあらはるゝ者は人是をちうすとかやさても吾助は宅兵衞を易々やす/\ころくわい中の金五兩二分と脇指わきざしうばひ取其上足手搦あしてがらみなるお兼さへ其處に命を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其れでなければあゝ易々やす/\と催眠術にかけられる筈はないと云うのです。全くのところ三平は梅吉のようなお転婆な、男を男とも思わぬような勝気な女が好きなのでした。
幇間 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
なんて云つても、あたしは、仕合しあはせだつたんですもの。女としての、重荷を負はない幸福が、あんなに易々やす/\と得られたことは、あんたが、何処かほかの男と違つてゐたからだわ。
モノロオグ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
彼れ自分で殺したと白状して居るけれど伯父が何の刃物で殺されたか夫さえも知ぬじゃ無いか、君が短銃ぴすとるの問は実にうまかッたよ、彼は易々やす/\と其計略に落ちた
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
引つ掻きやきを拵へたといふが、掴み合つたくらゐだからその揚句に殺さないとは限らないぢやないか——尤も小娘が易々やす/\と大男を殺せるわけはねえから
もちろん普通の場合ならばそう易々やす/\と潜入出来る筈はないが、彼が豫想した如く、寄せ手の大半は城の三の丸や二の丸の内部へ詰め切っていて、陣屋の方は人数も手薄に
あざむおほせんとする程の大膽不敵だいたんふてきなれば間もなく見樣見眞似みやうみまねにて風藥かぜぐすりの葛根湯位は易々やす/\調合てうがふする樣に成ける程に武田長生院も下男げなんにもめづらしきやつなれどさて心のゆるせぬ勤め振と流石さすがに老醫常々親戚しんせきの者へ語られしとぞ作藏のわづか三年ごしの奉公中にの道を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
... 忘れてさ、今度は能く覚えて行う、其生田さんの居る所は何所どことかいったッけなア」下女は唯此返事一つが己れの女主人には命より大切なる秘密と知らず易々やす/\と口にいだ
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
かうわかつて見ると、お夏の手を經ず味噌汁の中に易々やす/\と毒を入れられるわけで、曲者は朝になつてからお勝手に入る必要もなく、大量毒殺が出來ることになるのです。
「宗次郎が歸つたあとで主人に會ひ、疑はれもせずに易々やす/\と殺せるのは、元吉か藏人くらんどか清松の外にない。清松はそれほどの深いたくらみのある男でなし、藏人は二本差のくせに、猫の子のやうな男だ、それに」