政事まつりごと)” の例文
木曽家の花村甚五衛門と云えば、並ぶ者なき大智者で、木曽三十里の政事まつりごとを、一身に扱う器量人、主人勝りの武士さむらいであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
荊州の留守をしている潘濬はんしゅんも、とかく政事まつりごとにわたくしの依怙えこが多く、貪欲どんよくだといううわさもあって、おもしろくありません。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
即ち「政事まつりごと」は、「祭事まつりごと」で、この祭政一致の思想は、わが国固有の政治の特色として、現代にも及んで居るのである。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
今朝廷からこの指令のあるのは将軍の権を奪うにもひとしい、将権がひとたび奪われたら天下の政事まつりごとはなしがたい
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ふん! あんまりおもしろいこともあるまいが……政事まつりごとわたくしし、民をしぼる大盗徳川の犬だけあって、放火盗賊あらためお役が、賊をはたらく、このほうがよっぽどおもしろいぞ」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「一国の政事まつりごとを執らせられる方が、そんな気短きみじかな事を仰有るもんぢやござりません。兎角気長に構へさせられてな。今に御覧ごらうじませ、この種から立派な柿の実をらせて御覧に入れます。」
その事をおもい出すごとに、法皇の胸には、清盛に対する、いや平家に対する憎悪の念が、いやましにひどくなってゆくのである。諸事万端、物憂く、政事まつりごともつい投げやり勝ちな日が続いていた。
信長入洛じゅらくの事、聞き及ぶが如く也。将軍を擁立ようりつし、四民を欺瞞ぎまんせんとするも、政事まつりごとわたくしし、その暴虐ぼうぎゃくぶりは、日をうておおがたいものがある。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
政事まつりごとの中心にいる卿だったので、すぐに渦中にまき込まれ、寧日なく多忙になるだろう、遊びついでにもう少し遊ぼう、——というので大坂へ来てしまった。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さるを履をえばとて賤しみ、蓆を織りたればとてさげすむなど、そんな眼をもって、世を観、人生を観、よくも一国の政事まつりごとに参じられたものではある。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここにわれら義を結び、盟を作って義旗をひるがえし、武権をくじき皇威を揚げ、政事まつりごとを神代に返さんとす
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
第一政事まつりごとをなす機能すらすでに許都にはなくなっているのに、手をつかねて、勅命のくだるのを待っていたとて、いつのことになるか知れたものではない。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さあ改革だ! 建て直しだ。いい政事まつりごとをしなけりゃならない
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
天子に政事まつりごとを奏するため、董卓が昇殿したので、呂布はいつものように戟を執って、内門に立っていた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひとり六角中納言親経ろっかくちゅうなごんちかつねは、その罪を決める仁寿殿の議定ぎじょうでそれが公明の政事まつりごとでないことを駁論ばくろんした。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その子たる者が、何故、丞相府の一官吏となって、賤しき曹操の頤使いしに甘んじておらるるか、なぜ、廟堂に立って、天子をたすけ、四海の政事まつりごとに身命をささげようとはなさらぬか
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
木曾殿がよい政事まつりごとをなさらなければ、また、鎌倉殿が来て代ろう。——その鎌倉殿もいけなければなお、次の軍勢が来て治めよう。ここしばらくの討ちつ討たれつは仕方がない。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そればかりか、すでに帝もおわさず、政事まつりごともそこにはない宮殿へ無用な火を放って
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
政事まつりごとは事務ではないよ。簡単なるほどよろしいのだ。民の善性をたかめ、邪性じゃせいおさえる。圧えるではまだまずい。ほとんど、邪悪のさがを忘れしめる。どうじゃ、それでよろしいのじゃろう
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「好きなこともよう出来ず、さりとて政事まつりごとからは戸閉とじめを喰い、せめて歌でもむか、書でも書くか。そこよりほかに力の出し場がないなどということが……アハハハハ、のう坊主、あろかいな」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
司馬徽や徐庶は、世の高士ですが、自分はまったく、ありのままな、一農夫でしかありません。何で、天下の政事まつりごとなど、談じられましょう。——将軍はおそらく玉を捨てて石を採るようなお間違いを
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「爾今、共に協力して政事まつりごとをたて直そう」と、和解した。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
政事まつりごとを執るに足るだけの仮御所がそこに建てられた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)