)” の例文
枕は脂染あぶらじみた木枕で、気味も悪く頭も痛い。私は持合せの手拭を巻いてった。布団は垢で湿々じめじめして、何ともいえない臭がする。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
「水雷室の艙口ハッチを閉めろ! スパイキを持って来い! スパイキを! 甲板と艙口の間に、スパイキを突っえ!」
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
と云ったが、抜き身を地へ置くと、その手を頤の下へい、眉根へ寄せたがために、藪睨みのようになって見えるで、つくづくとお浦の顔を見詰め
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なにしろ窓には内部から桟が下ろしてあることではあり、表にも裏にも中から心張棒がってあった事実から見て自殺という説には疑いを挾む余地がなかった。
両手を腹につて、顔を強くしかめて、お由は棒の様に突立つたが、出掛でがけに言つた事を松太郎に聞かれたと思ふと、言ふ許りなき怒気が肉体の苦痛くるしみと共に発した。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
大藏はそっあとへ廻って、三尺の開戸ひらきどを見ますと、慌てゝ締めずにまいったから、戸がばた/\あおるが、外から締りは附けられませんから石をって置きまして、独言ひとりごと
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さうすると、彼等は折重なつて倒れ、それから級長の高い椅子で、支棒つゝかひぼうはれるのであつた。
⦆——⦅えい、この悪党め!⦆と署長は首を振り立てながら、側腹に手をって言うのだ。
君は自分の室の時計に綿様のものをって、時報を鳴らなくした筈だったね。
後光殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それから水を含んだが、かたく食いしばった広太郎の歯、容易なことでは開こうとしない。気がついて抜いたのは小柄こづかである。歯の間へソロソロとう。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
恁う言つて、お由は腰につた右手を延べて、燃え去つた爐の柴を燻べる。髮のおどろに亂れかゝつた、その赤黒い大きい顏には、痛みを怺へる苦痛が刻まれてゐる。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
と思って二畳の処を開けに掛ると、栓張しんばりってあって唐紙からかみが明きません。
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ちょうどい物を当てがったような恰好になる。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
う言つて、お由は腰につた右手を延べて、燃え去つた炉の柴をべる。髪のおどろに乱れかかつた、その赤黒い大きい顔には、痛みをこらへる苦痛くるしみが刻まれてゐる。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
廊下に向かった巌丈がんじょうな扉へ、錠をしっかりおろしてから、沙漠に面した玻璃ガラス窓へも用心の為に鍵をい、レースの窓掛カアテンを引いてから、虫捕香水を布団へ振りかけ、それで安心したと見え
木乃伊の耳飾 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
左門は、やがて地に腹這い、蛇が鎌首を持ち上げるように、首を上げ、頤の下へ両手をい、栞の姿をながめていた。栞は、そんなこととも知らず、片腕を枕にして、眠りつづけていた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)