摸索もさく)” の例文
われにぎつて、さうまなこあきらかにさいを、多勢たぜい暗中あんちゆう摸索もさくして、ちやうか、はんか、せいか、か、と喧々がや/\さわてるほど可笑をかしことい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
近代人の摸索もさくは、古語に観念的な内容を捉えようとしたのである。其が民族文学の主題であり、一言で言えば品格であった。
詩語としての日本語 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
工藝という媒介を通して、私の前著『神に就て』においてようやく摸索もさくし得た最後の道、「他力道たりきどう」の深さと美しさとをまともに見つめたのである。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
私は八方摸索もさくの結果、すがり附くべき一茎のわらをも見出し得ないで、むことなく覚束おぼつかない私の個性——それは私自身にすら他の人のそれに比して
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
家に居る時も、外に居る時も、不断に私はそれを考へ、この詰らない、解りきつた言葉の背後にひそんでゐる、或る神秘なイメ−ヂの謎を摸索もさくして居た。
田舎の時計他十二篇 (新字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
ここ数回は、清盛の出家と、一門繁昌の頂上期で、ひとまず筆をてんじ、牛若丸をめぐる“陰の人びと”とその母常磐の以後の境遇を摸索もさくして書いてきた。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また滑稽こっけいでもあったろうけれども、是があるためにこの種の他力信仰の時代色、もしくは中心とも根源とも名づくべきものが、少しずつ摸索もさくして行かれるのである。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
貫一はこの秘密のかぎを獲んとして、左往右返とさまかうさまに暗中摸索もさくおもひを費すなりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
今頃になってますます暗中摸索もさくという有様なのです。