揚子江ようすこう)” の例文
振り下ろしてきた相手のものをかわすやいな、相手の腰の辺りを足で蹴とばして、身は、揚子江ようすこうの流れへむかって飛びこんでいた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
南京ナンキンでは張学良ちょうがくりょうが空軍総司令になった。彼は毎日毎日米国製のカーチス戦闘機に乗って、揚子江ようすこう碇泊ていはくしているわが駆逐艦の上を飛んだ。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
青幇の金儲けの中で碼頭まわりというのがある。一寸仕事もなく暇ばかりで遊ぶのにも困るという時分に、揚子江ようすこう流域の碼頭遊歴と出かける。
水は黄色く濁った全くの泥水で、揚子江ようすこうのそれによく似ている。黄色い水の中に折々あんのような色をした黒いどろどろのものも交っている。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼等の枕に響いたのは、ちょうどこの国の川のように、清いあまがわ瀬音せおとでした。支那の黄河こうが揚子江ようすこうに似た、銀河ぎんがの浪音ではなかったのです。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
もし漢青年が今日こんにちのように切迫せっぱくした時局を知ったなら、彼はどころ故山こざんに帰り、揚子江ようすこう銭塘口せんとうこうとの下流一帯を糾合きゅうごうして、一千年前のの王国を興したことだろう。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
中国はその広漠こうばくたることヨーロッパに比すべく、これを貫流する二大水系によって分かたれた固有の特質を備えている。揚子江ようすこう黄河こうがはそれぞれ地中海とバルト海である。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
支那事変の初頭に作戦的に決潰けっかいして黄海こうかいにそそいでいた河口が揚子江ようすこうへそそいでいる。これを日本軍が大工事を起しているのだが、これが映画の主題で、この方は私に関係はない。
魔の退屈 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
そう高宗帝こうそうていきんの兵に追われて、揚子江ようすこうを渡って杭州に行幸ぎょうこうした際のことであった。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
冬ならば咽喉のどを痛くするものがたくさん出来る。けれどもそれは僕等の知ったことじゃない。それから五月か六月には、南の方では、大抵支那しな揚子江ようすこうの野原で大きなサイクルホールがあるんだよ。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
揚子江ようすこうを走っている日清汽船はからで動いているそうですがね。
女の一生 (新字新仮名) / 森本薫(著)
次に、揚子江ようすこうのうえを張横、張順のふたりが持って一覇をなし、つごう“三覇”がこのへんを抑えているようなかたちなのでございますよ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
バルコンの外のえんじゅの梢は、ひっそりと月光にひたされている。この槐の梢の向う、——幾つかの古池を抱えこんだ、白壁の市街の尽きる所は揚子江ようすこうの水に違いない。
長江游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
四五世紀のころには、揚子江ようすこう流域住民の愛好飲料となった。このころに至って始めて、現代用いている「茶」という表意文字が造られたのである。これは明らかに、古い「」の字の俗字であろう。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
商売は二人ともに揚子江ようすこうをまたにかけての塩の闇屋であるとのこと。そして童威には出洞蛟しゅつどうこうのあだ名があり、童猛には翻江蜃ほんこうしんの異名がある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「凶血が煙っています。おそらく同士打ちを起しているのでしょう。しかし、入るべからずです。道をかえて江陵こうりょう(湖北省・沙市さし揚子江ようすこう岸)へ行きましょう」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
支那大陸を生かしている二つの大動脈は、いうまでもなく、北方の黄河こうがと、南方の揚子江ようすこうとである。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美しい一艘の官船が檣頭しょうとう許都きょと政府の旗をかかげて、揚子江ようすこうを下ってきた。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さいえいから湖北の淮水わいすいへ出て、寿春、広陵にいたり、ここに揚子江ようすこうをさしはさんで呉の水軍と大江上戦を決し、直ちに対岸南徐へ、敵前上陸して、建業へ迫るという作戦の進路を選んだのであった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
途中揚子江ようすこうの大江はあるし、護送には、おびただしい兵馬も要る。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
揚子江ようすこうの水。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)