さす)” の例文
昨夜十二時少し過ぎ、小石川区さす町○○番地の坂の上で、「人殺しーい」という悲鳴が、人通りの少ない闇の街の空気にひびき渡った。
呪われの家 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
それも總括的に文藝其物に就てでなく新聞紙の如きあらゆる階級に——階級といつても上下卑賤をさすのではない
小石川区内では○植物園門前の小石川○柳町やなぎちょうさす谷町やちょう辺の溝○竹島町たけしまちょうの人参川○音羽おとわ久世山くぜやま崖下の細流○音羽町西側雑司ぞうしより関口台町せきぐちだいまち下を流れし弦巻川つるまきがわ
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
さすはじめ柳町、本郷丸山、西片町、森川町、最後に明神坂を下って万世橋からやっと鉄道馬車。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
判斷はんだん成敗せいはいさすに其人の年れい月日時を聞てを立かんがへをほどこし云ふ事實にかみの如く世の人の知る處なり扨翌日にも成りければ靱負ゆきへは其身の吉凶きつきようを見ることゆゑ沐浴もくよくして身體しんたい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「新し橋」の附近には、「何貫何百目何代鬼熊さす」とほった大石がころがっていたはず。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
伊太郎にはおそよという嫁があったが、ことしの三月に離縁になって実家へ帰った。岡崎屋は小石川の白山前町はくさんまえまちにある。嫁のおそよの実家もやはり酒屋で、小石川さす谷町やちょうにある。
平次は、この事件の底に、何やら容易ならぬ者があると見たか、神田から足場の惡さを考へて、土地の御用聞、さす町の喜七のところに、暫らく八五郎を泊らせることにしました。
また、さす町にある白山はくさん神社、これは小石川の総鎮守で神領三十石、神主由井氏ゆいし奉祀ほうしす。祭るところの神は、加賀かが白山はくさんに同じ、九月の二十一日がおまつりで、諸人群集、さかんなものである。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
今の文壇は、愚痴というものの外に、力の反応はんおうを見ることの出来ない程に萎弱いじゃくしているのだが、これなら何等の反感をも起さずに済むはずだ。純一はこんな事を考えながらさすの町を歩いて帰った。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
小石川春日町こいしかわかすがまちから柳町やなぎちょうさすちょうへかけての低地から、本郷ほんごう高台たかだいを見る処々ところどころには、電車の開通しない以前、即ち東京市の地勢と風景とがまだ今日ほどに破壊されない頃には