)” の例文
そうして鼓をんだ。自分は少し待ってくれと頼んだ。第一彼がどこいらで鼓を打つか見当けんとうがつかないからちょっと打ち合せをしたい。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
前立まえだて打ったるかぶとを冠り、白糸おどしの大鎧を着、薙刀なぎなたい込んだ馬上の武士——それこそ地丸左陣である。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小薙刀こなぎなたい込んで、かれの馬前を、馬に負けじと駈けきそってゆくので、利家は目ざわりなと思って
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
びっくりして、文子が、身を起そうとするとたん、怪しい助手は虎のように文子に跳びかかって、肩をかえると共に、いやな匂いのする、ハンカチを文子の鼻に押当てた。
骸骨島の大冒険 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
飛び上がろう、それがいい、飛び上がるにしくなしだと、とうとうまた先例によって一蹴いっしゅうを試むる事に決着した。ず帽子をとって小脇にい込む。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「おお!」と喚くと薪十郎、杖をい込んで突っ立った。「それじゃア手前は幹之介だな?」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ヴァイオリンを小脇にい込んで、草履ぞうりつっかけたまま二三歩草の戸を出たが、まてしばし……」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
刀を小脇にい込んだのは、襖をあけた瞬間に、部屋の中にいる武士たちの群れが、斬り付けて来ないものでもない、その時抜き合わせて戦おうと構えをつけたがためであった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ぐっと小脇にい込もうとするのをスルリと抜けた島君はバタバタと坂を上がって行く。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ところへ野だがすでに紀伊の国を済まして、かっぽれを済まして、たな達磨だるまさんを済して丸裸まるはだか越中褌えっちゅうふんどし一つになって、棕梠箒しゅろぼうきを小脇にい込んで、日清談判破裂はれつして……と座敷中練りあるき出した。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
申分の無いポーズで、話して歩いている間中、私に腕をい込んだり、私の肩へ手を置いたり、私の胸へよりかかったり、絶えずコクコクうなずいて、私の話へ合槌を打ったり、同情して眉をひそめたり
奥さんの家出 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その穴から湯気がぷうぷう吹くから、うまい工夫をしたものだ、田舎いなかにしては感心だと見ていると、爺さんふと立って、どこかへ出て行ったがしばらくすると、大きなざるを小脇にい込んで帰って来た。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「よし心得た」と云ったかと思うと、紐を小脇にい込んだ。
黐棹もちざおを素早くい込んだ。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)