)” の例文
自分の所信を貫徹するためには、一たびかためた決心をげぬ、あくまでも、左右の言にも耳をさずに猛進するくらいの強いところが必要である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「何があるもんか、少しのお賽銭で自然法を自分の都合の好い方へげようという横着な料簡があるばかりさ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
げてお願い申上げまする、水府御老公さま御一身に関して、なにやら軽からぬ言上がこれあるやに……」
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
さるは八百善にてと態々歩をげ、座敷へ通っての注文に「何かさっぱりしたもので茶漬を!」との申しつけ、やがて出されたは黒塗りの見事な膳部に誂えの品々
残されたる江戸 (新字新仮名) / 柴田流星(著)
神戸牧師にして見れば、証人として立った以上、事実をげて陳述する事は出来ない。又実際彼は殊更に事実を抂げて申述べる事をする人でもなければ出来る人でもない。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
法は法、げる訳になりませぬから、文治お町の両人を駕籠に乗せて奉行所へ引立ひったてました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おのれげてこれを行ふ心苦しさはしてぢ、仰ぎておそれ、天地の間に身を置くところは、わづかにそのるる空間だに猶濶なほひろきを覚ゆるなれど、かの痛苦に較べては、はるかに忍ぶの易く
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
こりゃ、答える訣にも行くまい。氏上に押し直ろうとしたところで、今の身の考え一つをげさせるものはない。上様方に於かせられて、お叱りの御沙汰を下しおかれぬ限りは——。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
「実は、傷所きずしょも充分癒りきらぬそれがしが、今日にわかにお伺い致したのは、重ね重ねではござるが折入って尊公に一大事のお頼みに参ったのでござる。何とげてお聞入れては下さるまいか」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
例えば井戸に物がちたと云えば、如何どう塩梅あんばいにしてこれげるとか、箪笥たんすじょうかぬと云えば、くぎさきなどを色々にげて遂に見事に之を明けるとか云う工風くふうをして面白がって居る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ことに今夜、げたぞと言わんばかりに、こうしてやって来たのが、今いった政府の文書課長。自分は浪人言わば失業者の大将みたいなものだから、はじめッから少々つむじまがっている。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
文壇というものがあって、そこに於て取扱われる問題は、何なりとも、私は、それに係わらず、自己の思念をげず、広い社会に向って、呼びかける——それを直に芸術ときめて来たのです。
自分を鞭打つ感激より (新字新仮名) / 小川未明(著)
これも解せずで——首をげた
都会と田園 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
御槍奉行、矢走源兵衛の一人娘として育ち、男勝りで、才智容色とも京極きょうごく家随一と云われる不由の、高く持してげぬ強い気性には実際ちょっと手の出せぬところがあるのだ。
入婿十万両 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「事そのものに感心していないんだ。しかし今更仕方がない。恩に着せるんじゃないけれど、げて引受けてやる。その代り将来を慎むんだぜ。すべて好きに終るものは好し」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
僕の考えでは世にはげてもよい意思がたくさんにあり、また意思を表示するに及ばぬものもたくさんあり、あるいは意思を明らかにする必要なきものもたくさんあると思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
寂しいけれども、自分の心をげることなく、いぢけさせることなく行くばかりが自分の道だ。さしあたつて、自分には芸のよさが訣つて来た。この幸福を何処までも、おとさぬやうに守つて行かう。
市村羽左衛門論 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
「……私には富美子の意志をげる気持もなしその必要もない、そしてまた富美子にその意志があったとしても、現在それが許されるかどうかは、……だがもうたくさんだ、帰りたまえ」
花咲かぬリラ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
譲って世を渡れとは説くものの、事によりては一歩もげられぬこともある。しかしてまたかく大切な事柄については一歩だも決してぐべきことでないと思う。僕はどこまでもげよとはいわぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
このほかにいささかの他念なく候えば、げて一夜の宿をたのみいりそろ。
日本婦道記:忍緒 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)