手持不沙汰てもちぶさた)” の例文
そのうまがさ、わしべつうまめづらしうもないが、白痴殿ばかどの背後うしろかしこまつて手持不沙汰てもちぶさたぢやからいまいてかうとするとき椽側えんがはへひらりと
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私は手持不沙汰てもちぶさたを紛らすための意味だけに、そこの棕櫚しゅろの葉かげに咲いている熱帯生の蔓草つるくさの花をのぞいて指して見せたりした。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
いつになくいとい避けるような調子で言って、叔父が机にむかっていたので、お俊はまた何か機嫌をそこねたかと思った。手持不沙汰てもちぶさたに、勝手の方へ引返して行った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
如何いかなる西洋嫌いも口腹こうふくに攘夷の念はない、皆喜んでこれあじわうから、ここ手持不沙汰てもちぶさたなるは日本から脊負しょって来た用意の品物で、ホテルの廊下に金行灯かなあんどんけるにも及ばず
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
仕掛るに隱居は兎角とかく不機嫌ふきげんゆゑ手持不沙汰てもちぶさたに其日は立歸たちかへりしが彦兵衞は如才じよさいなき男なれば偖佐竹樣のかつた所をよろこまけた所をいやがるは何かいはれ有るべしと思ひ翌日よくじつは馬喰町の米屋へ立寄たちより小間物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その馬がさ、私も別に馬は珍しゅうもないが、白痴殿ばかどの背後うしろかしこまって手持不沙汰てもちぶさたじゃから今引いて行こうとする時縁側へひらりと出て
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まあさ、まあさ、姉さん。」と円輔は手持不沙汰てもちぶさたなのをしきりむ。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
手持不沙汰てもちぶさたに、後退あとじさりにヒョイと立って、ぼんやりとしてふすまがくれ
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)