懷紙ふところがみ)” の例文
新字:懐紙
如何いかなるくはだてか、内證ないしようはずわざ打明うちあけて饒舌しやべつて、紅筆べにふで戀歌こひうた移香うつりがぷんとする、懷紙ふところがみうや/\しくひろげて人々ひと/″\思入おもひいれ十分じふぶんせびらかした。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
鬼貫は立つて縁先より娘のうしろ影を見送りゐたるが、やがて行燈をよきところに直して、小さき古机を持出し、しづかに筆を執りて懷紙ふところがみに何か書きはじめる。雪の音、木魚の音。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
其處そこへあの、めす黒猫くろねこが、横合よこあひから、フイとりかゝつて、おきみのかいたうた懷紙ふところがみを、後脚あとあしつてて前脚まへあしふたつで、咽喉のどかゝむやうにした。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
きみは、しかけたよういそがしいをりから、ふゆれかゝる、ついありあはせたしつけ紅筆べにふで懷紙ふところがみへ、と丸髷まるまげびんつややかに、もみぢをながすうるはしかりし水莖みづぐきのあと。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)