微動びどう)” の例文
次郎が視線も手足も微動びどうもさせなかったのに反して、馬田の視線はたえず波うっており、その手足はいつももじもじと動いていた。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
しかしながら大地震だいぢしんになると、初期微動しよきびどうでもけつして微動びどうでなく、おほくのひとにとつては幾分いくぶん脅威きよういかんずるようなおほいさの振動しんどうである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
つひにはにしたかま刄先はさきすこしづゝつちをほじくりつゝをんなしろ手拭てぬぐひはし微動びどうさせては俯伏つゝぷしなから微笑びせうしながら際限さいげんもなく其處そこ凝然ぢつとしてようとする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
もがき、喚いているのは裸体のまま柱にいましめられた坊主ひとり、大きな暗闇の中に蝋燭を握り、坊主の鼻先に小腰をかがめているお綱の姿は微動びどうもしていなかった。
禅僧 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
ホンノリ血の色がいて處女しよぢよ生氣せいき微動びどうしてゐるかと思はれる、また其の微動している生氣を柔にひツくるめて生々うい/\しくきよらかな肌の色==花で謂つたら、丁度ちやうど淡紅色の櫻草さくらさうの花に髣髴さもにてゐる
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
その微動びどうだもしない伏像ふくぞうに対して、一同は、声もなく眼を見張った。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
微動びどうし渡る
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
そして壇上だんじょうの声は、理事長、塾長、来賓と三たび変わり、たっぷり一時間を要したにもかかわらず、老は身じろぎ一つせず、黒眼鏡から反射する光に微動びどうさえも見られなかったぐらいであった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)