律義者りちぎもの)” の例文
律義者りちぎものの主翁はじぶんの家の客を恐ろしい処へやって、もし万一のことがあっては旅籠はたごとしてのきずにもなると思ったのでいて止めようとした。
山寺の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
忠右衛門忠真ただざねは、親類じゅうでの、律義者りちぎもので通っていた。元禄の世の、この変りようにも変らない、典型的な旧態人であった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
堀尾君と違って、勤め大切だいじ律義者りちぎもの、上役を神さまのように敬う男だから、堀尾君の失業を当然のことゝして、その折
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
主人しゆじん内儀かみさんは一おう被害者ひがいしやはなしをつけてた。被害者ひがいしや家族かぞく律義者りちぎものみなげきつてる。七十ばかりに被害者ひがいしや老人ぢいさんこと頑固ぐわんこ主張しゆちやうした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「明智先生、それは何かのお思いちがいでしょう。この門野は親の代からわしの店につとめている律義者りちぎものです。この男が二十面相だなんて、そんなはずはございません。」
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
曰ふ、しやうはたるは、氣盛なる者之を能くす、而かも眞勇しんゆうに非ざるなり。孤城こじやうえんなきに守り、せん主を衆そむくにたもつ、律義者りちぎものに非ざれば能はず、故に眞勇は必ず律義者りちぎものに出づと。
小心な律義者りちぎもので、病毒に感染することをおそれたのと遊興費がしくて、宮川町へも祇園ぎおんへも行ったことがないというくらいだから、まして教師の分際で競馬遊びなぞ出来るような男ではなかった
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
それでも彼の律義者りちぎものであることに変りはなかった。
東 律義者りちぎものの子沢山
東西伊呂波短歌評釈 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「女房を貰って大勢の子供を育てる律義者りちぎものは独身でいて人口論をやる奴よりも余計社会に貢献するというのさ」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
律義者りちぎものの子だくさん、ということわざのように、この国の特徴は、どこの軒からもあかぼうの声がよくすることである。その頃、浜松、岡崎を通る旅人がきっということは
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
律義者りちぎものの子沢山というが、この男も、まだ三十六というのに、子どもは四人もかかえている。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)