彩色いろど)” の例文
書斎のベランダに置かれた鳥籠の中で、薄桃色と青とで彩色いろどったような鸚鵡おうむが、日光を浴びながら羽ばたきをして、奇声を上げている。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
「この美しく彩色いろどつた家はいつたい誰の家ぢやの?」と猊下は、戸口の傍に嬰児みどりごを抱いて佇んでゐた美しい女に訊ねられた。
わが見たるところによれば彼は血と怒りの人なりき、この時罪人これを聞きていつはらず、心をも顏をも我にむけ、悲しき恥に身を彩色いろどりぬ —一三二
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
紙帳は、血によって、天井も四方の側面がわも、ことごとく彩色いろどられていた。そうして、古い血痕と、新らしい血痕とによって、怪奇ふしぎな模様を染め出していた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
福鼠ふくねずみ彩色いろどれ』と女王樣ぢよわうさま金切聲かなきりごゑさけばれました。『福鼠ふくねずみれ!福鼠ふくねずみ法廷はふていからせ!それ、おさえよ!そらつねろ!ひげれ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
リアリズムの用心深い足取りで生活の架け橋を拾い踏み渡りながら、眼は高い蒼空そうくうの雲に見惚みとれようとする。ゆがんだポーズである。この矛盾むじゅんが不思議な調子で時代を彩色いろどる。
斯うして省吾と連立つて、細長い廊下を通る間にも、朽ち衰へた精舎しようじやの気は何となく丑松の胸に迫るのであつた。壁は暗く、柱は煤け、大きな板戸を彩色いろどつた古画の絵具も剥落ちて居た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
我は汝によりて詩人となり汝によりて基督教徒クリスティアーノとなれり、されどわが概略おほよそゑがける物を尚良く汝に現はさんため我今手をべて彩色いろどらん 七三—七五
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
連翹れんぎょうすももの花で囲まれた農家や、その裾を丈低い桃の花木で飾った丘や、朝陽を受けて薄瑪瑙色うすめのういろに輝いている野川や、鶯菜うぐいすなや大根の葉に緑濃く彩色いろどられている畑などの彼方あなたに、一里の距離へだたりを置いて
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すみわたれる望月もちづきの空に、トリヴィアが、天のふところをすべて彩色いろど永遠とこしへのニンフェにまじりてほゝゑむごとく 二五—二七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
視しに、焔はそのうしろに彩色いろどれる空氣を殘してさきだちすゝみ、さながら流るゝ小旗のごとく 七三—七五
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
下には我等彩色いろどれる民を見き、疲れなやめる姿にて涙を流し、めぐりゆく足いとおそし 五八—六〇
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)