てい)” の例文
さよう、小名木川おなぎがわの五本松は芭蕉翁ばしょうおうが川上とこの川しもや月の友、と吟じられたほどの絶景ゆえけいたりがたくていたりがたき名木めいぼくでしょう。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
どれもこれもていたりがたくけいたりがたき腕白顔わんぱくがおだ。さだめし、屋敷やしきへかえったのちには、母者人ははじゃびとからお小言こごとであろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すべてこれらの諸点において、先生とていたりがたくけいたりがたき間柄あいだがらにありながら、しかも丁寧に頭を下げるのは、まられて仕方なしに下げるのではない。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分が膝をまじえて語るにる人物はといえば、まず、南の奉行大岡越前と、この、街の小父おじさん蒲生泰軒と、いずれも、けいたりがたくていたりがたし……この二人よりないと
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
されど若してい先んぜば、馨子の悲痛は弟にもまさりて激しかりしならんか。弟をして此の憂闇ゆうあんの力を破り得しむるものは、唯一つ馨子生きて之れが為に戦い、死に及んで止まざりし我等の理想也。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この鉄砲とても、いつぞや、塩尻峠のいのじヶ原で持ち出された業物わざものと、ていたり難く、けいたり難い代物しろものですが、それを持ち出した留守居の源五の腕だけは、あの時の一軒屋の亭主よりも上らしい。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ていたりがたし、けいたり難しでしょう」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ごうを辞していそむき三春さんしゅん
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
郷を辞していそむい三春
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「故人の評はいえません。しかし、孔明も彼の智には深く伏しています。また襄陽人士のあいだでも、二人を目して、けいたりがたていたり難しといっています」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
持前の侠気おとこぎと喧嘩好きから、この喧嘩屋の夫婦、一生涯の協力を約するのは当然で、ここに、顔形から剣を取っての腕まえまで、いずれもけいたりがたくていたりがたい神尾喬之助がふたり
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ていを抱き我を待つ 春又春
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
「やよ、魏王ぎおうてい。あまりあわてて馬より落ちるな。きょうはあえて汝を追うまい。悠々逃げよ」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、びならべて、いずれも、現天皇の寵臣として、けいたり難していたり難き者と見ていた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中国とは正にていたり難しけいたり難しといってよいかもしれない。
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)