左右さう)” の例文
何か魔物めいた妖麗ようれいさが附きまとっているように思えて、彼は我が眼を疑いながら、左右さうなく近寄ろうともせず、遠くから眺め渡していた。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
エニンは昔のエンガンニム、海抜約六百五十フイート、人口二千左右さう小邑せういふ、サマリヤの山尽きしもガリラヤの平原起る所のさかひにあり。
かくてたがひにいつっつのをりから、おひ/\多人數たにんず馳加はせくははり、左右さいふわかれてたゝかところへ、領主とのえさせられ、左右さうなく引別ひきわけ相成あひなりました。
呼立る時大岡殿せきを進まれ是迄段々吟味をとげし通り最早其方つみに伏したるやと云れしかば憑司は左右さうおそれぬていにて私し悴を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
村内でも工面くめんのよい方で、としもまだ五十左右さう、がっしりした岩畳がんじょうの体格、濃い眉の下にいたじゃの目の様な二つの眼は鋭く見つめて容易に動かず
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
いかにしてかかる辺りに彷徨さまよへるにやと思へど、今は親しからぬ身の左右さうなくは問はず。
野路の菊 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
恐らくあまりに切實な人生に堪へられないで、古い昔の、有つたやうな又無いやうな物語に、疲れ過ぎた現代的の心を遊ばせるつもりではなかつたでせうか、もし左右さうならば私も全く御同感です。
『伝説の時代』序 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いつくしき門のいしずえは、霊ある大魚の、左右さうに浪を立てて白く、御堂みどうを護るのを、もうずるものの、浮足に行潜ゆきくぐると、玉敷く床の奥深く、千条ちすじの雪のすだれのあなたに、丹塗にぬりの唐戸は、諸扉もろとびら両方に細めにひら
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山より取りし秦皮とねりこの大槍、——こなた左右さうの手に
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
江戸の左右さうむかひの亭主登られて 芭蕉
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
左右さうの破顏を反り見て
煤掃 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
妻の事は亀山よりの左右さう次第に藤井太郎右衛門と云し者に首をはねよ、此事返々かへす/″\露洩つゆもらすなよと、せいしをかゝせ、廿二日夜をこめつゝ名残をしくも宿を出て、亀山へいそぎ侍るに
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
双馬の車上身を乘せて、新の御者は左右さうの手に
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
信じ、兩將其船を左右さうの眞先に並べしむ
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)