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山霊
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さんれい
登らんとする
岩の
梯子に、自然の枕木を敷いて、踏み心地よき幾級の
階を、
山霊の
賜と甲野さんは息を切らして
上って行く。
何しろ
山霊感応あつたか、
蛇は
見えなくなり
暑さも
凌ぎよくなつたので
気も
勇み
足も
捗取つたが
程なく
急に
風が
冷たくなつた
理由を
会得することが
出来た。
山霊の
祟にやあらん
忽ち暴風雨を
起して
進むを得ざらしむ、
唯口碑の伝ふる所に
拠れは、百二十年以前に於て
利根水源たる
文珠菩薩の
乳頭より
混々として出で
来り
樹木や
山霊を師として勉強いたしました。
昨夜来頻りに
降り来る雨は朝に至りて未だ
霽れず、
遥かに利根山奥を
望むに
雲烟濛々前途
漠焉たり、藤原村民の言の如く
山霊果して一行の
探検を拒むかと
想はしむ
山霊に対して、小さな
身体は、既に茶店の屋根を
覗く、
御嶽の
顋に呑まれていたのであった。