宜敷よろし)” の例文
高次郎氏の所へ一年に一度年賀の挨拶に私の方から出かけて行くのも「今年もまた何をし出かすか分りませんから、どうぞ宜敷よろしく」
睡蓮 (新字新仮名) / 横光利一(著)
それよりももつと突き詰めたことをいへば、大学が古書を高閣かうかくつかねるばかりで古書の覆刻ふくこくを盛んにしなかつたのも宜敷よろしくない。
ちょうどそのとき運悪く、峻も私のそばにいたのであったが、貞子は峻の前に手を突いて「どうぞ宜敷よろしくお願いいたします」
秋草の顆 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
『ねえ大衆作家君、僕等の読みたいのはういう物です。こういう物を作って下さい』『はいはい宜敷よろしうございますとも、そういう物を作りましょう』
大衆文芸問答 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今にこの式の映画が大流行をきたすと思うから、何ならパテントをお譲りしても宜敷よろしい。御賛成の諸君がありましたら……ハイ只今……一寸ちょっとお待ち下さい。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
土地の待合ではしつッこい年寄のお客へなら千代香さんでなくてはならぬようにいつも目星をさされていただけ、朋輩の評判ははなは宜敷よろしからず、第一がケチでしみったれで
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
其の時聴衆みな言ってえらく、ばかりの佳作を一節切のはなずてに為さんはおしむべき事ならずや、宜敷よろしく足らざるを補いなば、あっぱれ席上の呼び物となるべしとの勧めにもとづ
『お預りしても宜敷よろしうございませうか? 出過ぎた様でございますけれど。』
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
其時そのときあつまツてツた、一どうものよろこびはくらいりましたか、商家抔せうかなどではおうおわし取扱とりあつかつてるから、醫者いしやぶもはぬとようときは、實驗上じつけんぜう隨分ずいぶんもちひて宜敷よろしほうようぞんじます。
「神と一緒に悪魔を案出する程なら、その何方をも案出せぬ方が宜敷よろしい。」
ラ氏の笛 (新字新仮名) / 松永延造(著)
伊「へえ宜敷よろしゅうございまする、何んな事が有りましても、わたくしは助けて戴きましたので、其のくらいの事はお安いことでございます、おまつや清八は何処へ往っちまッたか知ら、師匠皆んな見えなくなったね」
「長くはいないだろう。フロウレンスへ行きたいんだそうだが、君に宜敷よろしくって終りに書いてあったよ。」
旅愁 (新字新仮名) / 横光利一(著)
図書館の位置が火災の原因になりやすい医科大学の薬品のあるところと接近してゐるのも宜敷よろしくない。
「もう宜敷よろしうございますわ」——看護婦の声が聞えて来た。
人間製造 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
(その為めに今度のやうな火災にもどういふ本が貴重かがわからず、従って貴重な本を出すことも出来なかつたらしい。)書庫そのものの構造のゾンザイなのも宜敷よろしくない。
「兄ですの、どうぞ宜敷よろしく。」
旅愁 (新字新仮名) / 横光利一(著)