姫御前ひめごぜ)” の例文
カピ妻 ならば、いま、ようおもふてや、そもじよりも年下としした姫御前ひめごぜで、とうに、このヹローナで、母親はゝおやにおなりゃったのもある。
甚だしき怒声を発してそのすねや尾をき、またしりを咬むと相手またこれに返報し、姫御前ひめごぜに不似合の大立ち廻りを演ずるを酋長らえ飛ばして鎮静す。
なげきに枝を添うるがいたわしさに包もうとはつとめたれど……何をかくそう、姫御前ひめごぜは鏁帷子を着けなされたまま
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
いやこれはもそう、深窓に姫御前ひめごぜとあろうお人の、他所よその番地をずがずがお弁別わきまえのないはそのはずよ。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
香橙色くねんぼいろ薔薇ばらの花、物語に傳はつた威尼知亞女ヹネチヤをんな姫御前ひめごぜよ、きさきよ、香橙色くねんぼいろ薔薇ばらの花、おまへの葉陰の綾絹あやぎぬに、虎のあぎとてゐるやうだ、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「……こんな殿ごと添いしの身は姫御前ひめごぜの果報ぞとツンツンテンと、つまりここだ」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「へへへへへ、華族で、金があれば、ばかでも嫁に行く、金がなけりゃどんなに慕ってもつばきもひッかけん、ね、これが当今いま姫御前ひめごぜです。へへへへ、浪子さんなンざそんな事はないですがね」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
佐助どんも可哀かわいそうだし第一こいさんのためにならぬと女中の誰彼だれかれが見るに見かねて稽古の現場へ割って這入はいりとうさんまあ何という事でんの姫御前ひめごぜのあられもない男のにえらいことしやはりまんねんなあと止めだてでもすると春琴はかえって粛然しゅくぜんえり
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
……(婦人連に對ひ)あァ、はァ、姫御前ひめごぜたち! 舞踏をどるをいやぢゃと被言おしゃひとがあるか? 品取ひんどって舞踏をどらッしゃらぬひとは、誓文せいもん肉刺まめ出來できてゐるンぢゃらう。
おお、それだと、たとい須磨すまに居ても、明石あかしに居ても、姫御前ひめごぜは目をまわそう。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)