大本たいほん)” の例文
夫婦親愛恭敬の徳は、天下万世百徳の大本たいほんにして更に争うべからざるの次第は、ぜん既にその大意をしるして、読者においても必ず異議はなかるべし。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
人のこの世に生存するは毎日の食物を摂するがためなり。食物は生存の大本たいほんなるに世人せじんの深く注意せざるはあやしむべし。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
かみおんみずから、親しく諸政をみそなわす儀は、うごかざるまつり大本たいほんとして、その下における武門の統御とうぎょのみを、尊氏におゆだねあらせられるぶんには」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そういう訳で、今日の世界の文明も、利益の大いなるものに非ざれば決して入って来ない。儒教も一部人道の大本たいほんを教え真理を教えた。仏教に於てもかくの如きものである。
女子教育の目的 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
しかれども我邦わがくににはいまだ研究道楽の流行なし。ことに毎日の食物は人類生存の大本たいほんにして最も研究を要すべきに世人の多くその事に不注意なるは惜むべし。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
の政治家が国事を料理するも、実業家が商売工業を働くも、国民が報国の念に富み、家族が団欒だんらんの情にこまやかなるも、その大本たいほんたずねればおのずから由来する所が分る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
もって、日本の正しいすがたを、昭々しょうしょうと千古にのこし伝え、後々のちのち億兆おくちょうの臣民が、世々よよの文化の推移にも、国系国体の大本たいほんに惑ったり見失ったりすることのないような、史林しりんの源泉をつくっておく。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生活問題の人生に大切なるは今更の事にあらざれども世人せじんはとかく迂闊うかつに流れて人生の大本たいほんを忘るる事多し。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
かつまた、文脩まれば武備もしたがって起り、仏人、かきせめげども外そのあなどりふせぎ、一夫も報国の大義を誤るなきは、けだしその大本たいほん、脩徳開知独立の文教にあり。
いわゆる御流儀といわれる柳生家の大本たいほんとするところは
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何となれば食物は人生の大本たいほんであるから我が心身を養って天下に大事業を成さんとするほどの者は何より先に食物問題を研究して我が身体からだを大切にしなければなりません。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
人生の身体とその精神と、いずれをも軽しとしまた重しとすべからざるはいうまでもなきことにして、今内行ないこうの不取締は、人倫の大本たいほんを破りて先ず精神を腐敗せしむるものなり。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
人倫の大本たいほんは夫婦なり。夫婦ありて後に、親子あり、兄弟姉妹あり。天の人を生ずるや、開闢かいびゃくの始、一男一女なるべし。数千万年の久しきを経るもその割合は同じからざるをえず。
中津留別の書 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
外面の体裁ていさいに文野の変遷へんせんこそあるべけれ、百千年の後に至るまでも一片いっぺんの瘠我慢は立国の大本たいほんとしてこれを重んじ、いよいよますますこれを培養ばいようしてその原素の発達を助くること緊要きんようなるべし。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
以て人倫不取締の今日に至りしは、国民一家の不幸にとどまらず、そのわざわいは引いて天下に及ぼし、一家の私徳みだれて社会交際の公徳を害し、立国の大本たいほん、動揺せざらんと欲するもべからず。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
マアうような調子で、私はひどく政府を嫌うようにあるけれども、その真実の大本たいほんえば、前に申した通りドウしても今度の明治政府は古風一張りの攘夷政府と思込おもいこんで仕舞しまったからである。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)