大切おおぎり)” の例文
要するにたれの恋でもこれが大切おおぎりだよ、女という動物は三月たつと十人が十人、きて了う、夫婦なら仕方がないから結合くっついている。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「三組盃」の作者はやはり三代目新七であったが、大切おおぎりの浄瑠璃に「奴凧」が上演された。この浄瑠璃が黙阿弥の絶筆である。
寄席と芝居と (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その月の芝居では「松朝扇ときわのいろおうぎのうつし絵」という、大切おおぎり所作事しょさごとに出るだけで、前借りがたまっているため、給金も半分止めになっていたし、座敷の数も少なかった。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
場席の手入れや大道具の準備に忙しい中をのぞいてみたが、その時はもう絵看板や場代なんかも出ていて、四つの出しもののうち、大切おおぎりの越後獅子をのぞいたほか
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
するとそれぎり死ぬ。でなければ、大切おおぎりの手前まで行って、急に反対の方角に飛び出してくる。消極へ向いて進んだものが、突如として、逆さまに、積極の頭へ戻る。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
話は与作が真打しんうちで、町内のもっともらしいのが五六人、番頭の左太松と、倅の甲子太郎と、出入りのとびの頭寅松とらまつと、小僧が二人——吉之助きちのすけ宮次みやじが、大切おおぎりの道具方に廻りました。
然も紙屑屋かみくずやとさもしき議論致されては意気な声もききたくなく、印付しるしつき花合はなあわまけても平気なるには寛容おおようなる御心おこころかえって迷惑、どうして此様このようめす配偶つれあいにしたかと後悔するが天下半分の大切おおぎり
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その呂昇もすでに過去の人となって、東西共に女義界は大切おおぎりの簾が下りた。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
つづく大切おおぎりが「京鹿子娘道成寺」で、役割は、白拍子しらびょうしに岩井半四郎、ワキ僧が尾上梅三郎おのえうめさぶろうに、瀬川吉次、長唄は松島三郎治まつしまさぶろうじ坂田兵一郎さかだへいいちろう、三味線は、お師匠の杵屋新次きねやしんじさまに、お弟子の新三郎しんさぶろう
京鹿子娘道成寺 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
大切おおぎり浄瑠璃じょうるり上の巻「襖落那須語すおうおとしなすのかたり」、下の巻「名大津画噂一軸なにおおつえうわさのいちじく」。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
大切おおぎり浄瑠璃に「かっぽれ」を踊るという大勉強に、まず相当の成績を収めたが、二番目の円朝物は好評でなかった。
寄席と芝居と (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大切おおぎりの越後獅子の中ほどへくると、浅太郎や長三郎の踊りが、お絹の目にもだるっこく見えた。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
これを見るにけて自分の心は愈々いよいよ爛れるばかり。然し運命は永くこの不幸な男女をもてあそばず、自分が革包かばんを隠した日より一月目、十一月二十五日の夜を以って大切おおぎりてくれた。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
狂言は一番目「菅原伝授手習鑑すがわらでんじゅてならいかがみ」、中幕「壺坂霊験記つぼさかれいげんき」、二番目「三日月みかづき」、大切おおぎり廓文章くるわぶんしょう」というならべ方であったが、今度は芝翫が抜けたので一座はいよいよ寂しく
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
殊に団十郎が歌舞伎座から一役だけ掛持ちして、「勧進帳」の弁慶を勤める。大切おおぎりには初上はつのぼりの中村鴈治郎がんじろうがやはり歌舞伎座と掛持ちで出勤して、「近江源氏」の盛綱を勤める。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この失敗が致命傷になって、守田勘弥はふたたび雄飛する機会を失ったと伝えられている。それでも新富座は三月興行のふたをあけて、一番目二番目から大切おおぎりの浄瑠璃まですべて新作をならべて見せた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)