多端たたん)” の例文
つうたつとでも言いましょうか、江戸始まって以来の奇才と評判される多忙多端たたんの源内先生が、明和七年正月十六日の朝ぼらけ
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「しかし、いまの戦国多端たたんのときに、二、三百の兵を四日にあつめてくるのは容易よういでないこと。龍太郎、それはまちがいないことか……」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すこぶる多端たたんなりし、しかも平地に於ける準備と異なり、音信不通いんしんふつうの場所なれば、もし必要品の一だも欠くることあらんか、到底とうていこれをもとむるに道なし
もっと軍務ぐんむ多端たたんさいとて、そのしきいたって簡単かんたんなもので、ただ内輪うちわでお杯事さかずきごとをされただけ、もなく新婚しんこん花嫁様はなよめさまをおれになって征途せいとのぼられたとのことでございました。
けだし聞く、大禹鼎だいうかなえて、神姦鬼秘しんかんきひその形を逃るるを得るなく、温嶠犀おんきょうさいねんして、水府竜宮すいふりゅうぐうともその状を現すを得たりと。れ幽明の異趣、すなわ詭怪きかい多端たたんこれえば人に利あらず。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
この種の心理の実例は極めて広汎多端たたん、且つ普遍的の性質を有しおるものにして、往昔の切腹、義死、憤死等の心理又は、普通の自殺者の遺書等の中に発見さるる夢の如き「自己歎美」又は
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
こういう風に相談が多端たたんわたったために、頼母子講たのもしこうは夜に入ってようやく散会となった。散会となるや、安兵衛と勘平とは庄左衛門のことが気になるので、宙を飛ぶようにして林町の宿へ駈け戻った。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
「時務、軍務などは、いくら多端たたんでも何ともせぬが、先帝(後醍醐)のおりにはとんと手を焼いたぞ。佐々木、早よう何とかならんかな」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉をめぐる戦後の多忙は、戦前の多端たたんまさるものがあった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)