堅炭かたずみ)” の例文
といいながら小さくした堅炭かたずみをドンドン中へつめこんだ。そしてまた底の方をすこしすかせ、綿を三枚ほど重ねて蓋をした。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
... 涼炉しちりんで燃しているようなものサ。土竈どがまだって堅炭かたずみだってみんな去年の倍と言っても可い位だからね」とお徳は嘆息ためいきまじりに「真実ほんとにやりきれや仕ない」
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
お俊の着物をでて見、しまひに裾をまくり、手紙を書くと云ふとき堅炭かたずみを持ち来り、お俊の懐中鏡を借りて我顔を写し、見えをして見るも悪るふざけなり。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
土蔵くらの縁の下にも住居すまいの下にも、湿けないようにと堅炭かたずみが一ぱい入れてあるといったうちで、浜子一代は、どんなことがあっても家に手を入れないですむようにと
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
首垂うなだれたり、溜息ためいきをしたり、しわぶいたり、堅炭かたずみけた大火鉢に崩折くずおれてもたれたり、そうかと思うと欠伸あくびをする、老若の患者、薬取がひしと詰懸けている玄関を、へい、御免ねえ
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大きな堅炭かたずみを七厘でカンカン起して火鉢の真中まんなかへ入れてまだ黒い部分があったら全く火になるまで鍋をかけずにおく。すっかり火になった処で四方より藁灰をかけてよく生け込んでおく。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
おつぎは勘次かんじ煙草たばこはないので一寸ちよつと煙草たばこをとることにまでは心附こゝろづかなかつた。野田のだでは始終しじうかん/\と堅炭かたずみおこしていくらでもたぎつてよるでも室内しつない火氣くわきることはないのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
この会計だが、この分では、物価騰昇とうしょう寒さのみぎり堅炭かたずみ三俵が処と観念のほぞを固めたのに
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)