土壌どじょう)” の例文
旧字:土壤
けれども一文芸院を設けてゆうにその目的が達せられるように思うならば、あたかも果樹の栽培者が、肝心の土壌どじょうを問題外に閑却かんきゃくしながら
文芸委員は何をするか (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すると爆弾は土中どちゅうで爆発すると、中からA液が出て来て、それが地隙や土壌どじょう隙間すきまや通路などを通って、どんどん地中深く浸透してくるのさ。
土壌どじょうの力学に関連してだいぶこの方面が理論的にも実験的にも発達して来たようではあるが、それはしかしほとんど皆静力学的のものであって
自然界の縞模様 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
生む力、えてゆく力、念仏門の信仰は、春の土壌どじょうのような無限さをもって、日月の光のとどかない所にも念仏の声はあるように弘まって行った。したがって
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あとで土壌どじょうのほうでも説明せつめいします。腐植質磐層ふしょくしつばんそうというものもたようなわけでできるのですから。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
この氷河が消失して、従って新疆地方しんきょうちほう灌漑かんがいする川々の水量が少なくなり、そのために土壌どじょうがかわき上がって今のような不毛の地になったらしい。
ロプ・ノールその他 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
あるの、あのなかにも。あいだは、昼行燈ひるあんどんでも、昼間の月でも、かまやせん。たとえば、この蓼にしても馬さえ喰わぬが、土壌どじょうの恩と、陽の恩には、ちゃんと報じておる。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
 大博士に疑問ぎもんをいだく。噴火がかりしょくをはがれ、その火山ばい土壌どじょうたがやす。部下ぶかみなしたがう。
のみならずまた火山の噴出は植物界を脅かす土壌どじょうの老朽に対して回春の効果をもたらすものとも考えられるのである。
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ところがそのへん、ふもとゆる傾斜けいしゃのところには青い立派りっぱ闊葉樹かつようじゅ一杯いっぱいえているでしょう。あすこは古い沖積扇ちゅうせきせんです。はこばれてきたのです。割合わりあい肥沃ひよく土壌どじょうを作っています。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
火は、あらゆるものの決裁と清掃をり行うとき氏神うじがみだ。そして残る白い灰は、次の土壌どじょうに対して、はやくも文化の新しい萌芽ほうがをうながし、灰分的かいぶんてき施肥せひの役目をはたしている。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
土壌どじょうあさくて少しをのばすとすぐ岩石でしょう。下へびようとしても出来ないでしょう。よこに広がるだけでしょう。ところが根とえだ相関現象そうかんげんしょうたような形になるんです。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
めぐまれた土壌どじょうと文化の上で、腐敗と乱脈をみずから演じ、長夜の夢をむさぼッているが、こんな現状をなお長くしていたら、ついには蕃土ばんどりょうから攻め入られて、あっというまに
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
次には大洋の水量の恒久と関係して蒸発や土壌どじょう滲透性しんとうせいが説かれている。
ルクレチウスと科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
爾薩待「さうですな。品種や土壌どじょうによりますがなあ、さうですなあ、陸稲一反歩となるというと、可成いろいろですがなあ、その塩水撰したやつとしないやつでもちがいますがなあ。」
植物医師:郷土喜劇 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
この蕪は、春夏秋冬、いつでも成育するし、土壌どじょうをえらばない特質もある。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また根の周囲の土壌どじょうの質や水分供給の差異によるとも思われなかった。
破片 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)