囃子ばやし)” の例文
ともあれ、正月も過ぎてその時、村の祭りでも近づいていたのか? 遥かの麓からあまり上手でもない馬鹿囃子ばやしの笛が聞えてきた。
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
地方の民が、大蔵省へ馬で貢税みつぎを運び入れながら唄った国々の歌が催馬楽さいばらとなったといわれるが、田楽ももとは農土行事の田植え囃子ばやしだった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゆかしいお家流で「お雛様ひなさま」だとか「五人囃子ばやし」だとか「三人上戸じょうご」だとか、書きしるしてある、雛人形の箱でございました。
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
末子も大きくなって、もうひないじりでもあるまいというところから、茶の間の床には古い小さな雛と五人囃子ばやしなぞをしるしばかりに飾ってあった。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
蔵の二階に上ってみたら、父は検査場の方からまつ囃子ばやしの聞えてくる窓べにもたれて、背なかをまるくして、口三味線で小声になにやら唄っていた。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
お雛様を飾った時、……五人囃子ばやしを、毬にくッつけて、ぽんぽんぽん、ころん、くるくるなんだもの。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
更に眼を定めてよく見ると内裏様だいりさまもあれば、官女かんじょもあり、五人囃子ばやしもあり、衛士えじもあり、小町姫もあり、また雛道具としては箪笥たんす、両替、膳、鏡台、ボンボリ、屏風びょうぶ
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
幕のかげから見える頭数は五十人もいるかと思われる。橋をくぐる前までは、二梃三味線で、「梅にも春」か何かを弾いていたが、それがすむと、急に、ちゃんぎりを入れた馬鹿囃子ばやしが始まった。
ひょっとこ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「あつしはまた一生懸命叩きましたよ、馬鹿囃子ばやしか何んかで」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
祭り囃子ばやしの一組が、それに交じって、景気をつけた。馬の鈴までがすばらしくりんりんと今朝はよく鳴るのだ。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
御厨子みずしの前は、縦に二十間がほど、五壇に組んで、くれないはかま白衣びゃくえの官女、烏帽子えぼし素袍すおうの五人囃子ばやしのないばかり、きらびやかなる調度を、黒棚よりして、膳部ぜんぶながえの車まで、金高蒔絵きんたかまきえ
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さっきは湯立神楽ゆだてかぐらの静かな鈴楽でしたが、今は序破急な大太鼓のとどろきに鎌倉舞かまくらまいの笛囃子ばやしがいとおかしげにじって、楽天的な神代の明るさが山にあふれるかと思われるようです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
子供のうち悪戯いたずらをして叱られると、内を駈出かけだして、近所の馬鹿囃子ばやしの中へ紛込んで、チャチャチャッチキチッチッと躍っていると、追駈おっかけて来た者が分らないで黙って見遁みのがしては帰ったが
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
根は百姓、御府外ごふがい多摩郡たまごおり阿佐あさヶ谷村の産でして、ぎょうとするところは練馬大根の耕作にありますが、いわゆる武蔵野名物は草神楽くさかぐら、阿佐ヶ谷囃子ばやしのおはやしの一人でして、柄にもなく笛が上手。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小稲、小幾、重子など、狂言囃子ばやしの女ども、楽屋口より出できたりて、はらりと舞台に立ちならべる、大方あかり消したれば、手に手に白と赤との小提灯こぢょうちん、「て」「り」「は」と書けるをひっさげたり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「なんだろう、あの無遠慮な、浮かれ囃子ばやしは」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
首斬り囃子ばやし、街をる事。並びに
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「けだもの囃子ばやし。けだもの囃子」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鳴門音頭、そこぬけ囃子ばやし
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
散所囃子ばやし——
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けだもの囃子ばやし
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うかれ囃子ばやし
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)