古刹こさつ)” の例文
湖水を挟んで相対している二つの古刹こさつは、東岡なるを済福寺とかいう。神々こうごうしい松杉の古樹、森高く立ちこめて、堂塔をおおうて尊い。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
下の山寺は観音大悲を本尊とするので観音院とも、奈古谷寺なごやじともばれている古刹こさつだった。庫裡くりのわきに近頃建てたらしい一棟の僧舎がある。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
博覧会を初め名所古刹こさつを遊覧し、西陣に織り物を求め、清水きよみず土産みやげを買い、優遊の限りを尽くして、ここに十余日を過ぎぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
御牧はもっぱら貞之助に人物試験をされに来たので、自分では縁談のことには触れず、建築の話や絵画の話から、京都の名園や古刹こさつの話、嵯峨さがの父子爵ししゃく邸の林泉や風致の話
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
白金しろかね古刹こさつ瑞聖寺ずいしょうじの裏手も私には幾度いくたびか杖を曳くに足るべきすこぶ幽邃ゆうすいなる崖をなしている。
古刹こさつ、早雲寺の前であった、早川の渓流は、背中の方に当って見えなかったが、南側には塔が峰が聳え、湯阪山の翠微が落ちかかった、宅より小高いところに、貯水池があって
寺は安中路あんなかみちを東に切れた所で、ここら一面の桑畑が寺内じないまでよほど侵入しているらしく見えた。しかし由緒ある古刹こさつであることは、立派な本堂と広大な墓地とで容易に証明されていた。
磯部の若葉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
薬王寺は碧海郡あおみぐん古刹こさつで、行基ぎょうぎ菩薩の建立するところである。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
浄土宗の古刹こさつ松庵寺で
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
汝南に迫った関羽は、古刹こさつの一院に本陣をおいて、あしたの戦に備えていたが、その夜、哨兵の小隊が、敵の間諜らしい怪しげな男を二名捕まえてきた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伝通院の古刹こさつは地勢から見ても小石川という高台の絶頂でありまた中心点であろう。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
寺は安中あんなかみちを東に切れた所で、ここら一面の桑畑が寺内まで余ほど侵入しているらしく見えた。しかし、由緒ある古刹こさつであることは、立派な本堂と広大な墓地とで容易に証明されていた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
山には、漢の明帝が建立した鎮国寺という古刹こさつがある。弁喜は、部下の大勢をここに集めて
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或日父母に従って馬車を遠く郊外にせ、柳とあしと桑ばかり果しなくつづいている平野の唯中に龍華寺りゅうげじという古刹こさつをたずね、その塔の頂に登った事を思返すと、その日はたしかに旧暦の九月九日
十九の秋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
新七は細工場へちょっと顔を見せた後、行水ぎょうずいを浴びて、ぶらりと出て行った。——そして町端れから西の方へ十余町ばかり行くと、一叢ひとむらの森の中に児屋郷こやごう古刹こさつ昆陽寺がある。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこは薊州けいしゅう城外の古刹こさつ、さすが寺だけは山巒松声さんらんしょうせい、いかにもこけさびた閑寂な輪奐りんかんだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さようで。いちばん奥の古刹こさつでございまする」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冬陽もささない寂光の古刹こさつ
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)