叡慮えいりょ)” の例文
こう穏やかでない時勢であるから輦下れんか騒擾そうじょうをしずめ叡慮えいりょを安んじ奉らんがためであることはいずれも承知するところであろう。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これ以上、主上にせまッて、叡慮えいりょのお苦しみをみてもと、義貞も観念のほかはなく、ついに拝諾のお答えとなったものだった。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まず頓阿はその『井蛙抄せいあしょう』の中でいっている。『新古今』に入集した定家の歌は、自身以外の撰者の考えと叡慮えいりょとによって採られたもので、自撰でないから標準にならぬと。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
「されば、世を王朝の昔にかえさんとの叡慮えいりょも御無理ではございませんが、いかんせん、世は変ッて、延喜えんぎ天暦てんりゃくのむかしの比ではありませぬ」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
条約を引きもどすか、征伐するか、いずれかを選んで叡慮えいりょを安んずるであろうという意味のことが、あらかじめ奉答してあった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
当節、大樹帰城の儀、叡慮えいりょにおいても安んぜられず候間、滞京ありて、守衛の計略厚く相運あいめぐらされ、宸襟しんきんを安んじ奉り候ようおぼし召され候。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
(信長の統業は、帰して、一天の君にあり、信長は叡慮えいりょによって、ただ宇内うだい騒乱そうらんをしずめ、陛下の民を安んじたてまつるための一朝臣である)
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
京都伝奏からのその来書によると、叡慮えいりょにより官位を召し上げられ、かつ国元へ謹慎を命ずるとあって、関白がその御沙汰をうけたとしたためてある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
何か深い叡慮えいりょのあることとは、董承にもはや察しられたが、帝のあまりにもきびしい御眼おんまなざしに身もこわばって、彼はにわかに唇もうごかなかった。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「時局、容易ならぬときにいたりましてござりまする。……そのうえに、叡慮えいりょをわずらわし奉るは、まことに、恐懼きょうくにたえぬとはぞんじますなれど」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もとより朝廷において、そんな卑劣な叡慮えいりょはあらせられるはずもないが、世間からながめた時は徳川氏をつぶす手段と思うであろう。御一新となってまだ間もない。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
自分の立場として、ご対面はゆるされませんが、何ぞ、叡慮えいりょに達したい御一念があるなら、道の桜の小枝さえだに、お歌でも書いて結んでおかれてはいかがですか。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宮様御降嫁の当時から外夷がいい防禦ぼうぎょを誓い、諸外国と取り結んだ条約を引きもどすか、無法な侵入者を征伐するか、いずれかを選んで叡慮えいりょを安んずるであろうとの言質げんちが与えてある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いっときたりと打ち捨ておかれぬ大事ではありますが、叡慮えいりょを騒がし奉るだん、なんとも恐懼きょうくにたえませぬ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何事も叡慮えいりょを伺った上でないと朝廷のおぼし召しはもとより長防鎮庄の運命もどうなることであろうか、今般の征伐はしばらく猶予され、大小の侯伯の声に聞いて国是こくぜを立てられたい
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「なにとぞ、あなたさまからも、叡慮えいりょをおなだめおき給わりますよう。心からおねがい申しておきまする」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
およそ臣子の分として、この叡慮えいりょにおこたえ申し奉らざるものやあろう。遠く、この北越の辺隅にあっても、一日とて、そのありがたい優諚ゆうじょうをわすれたことはない。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、常のとおり礼を正して迎えた上、草莽そうもうの臣下の微志に対して、叡慮えいりょのほど勿体ないと、感泣した。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
万里小路中納言惟房までのこうじちゅうなごんこれふさ立入左京頼隆たちいりさきょうよりたかの二使は、やがてそれへ来て、叡慮えいりょを伝えた。信長は拝伏して
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
という特別な叡慮えいりょも辞句にはいっていた。またそれにちょうしてもこれ以外のあまたな将士にもそれぞれ何かのかたちで嘉賞の沙汰が一せいにおこなわれたのはいうまでもないだろう。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さるがゆえに、みかども准后の御方も、彼は情けある武士よと今もって信じておられる。また深くそのせつの道誉の忠義をおおぼえあらせられて、ここは助けとらせよとの叡慮えいりょでもあるらしい
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして平定の次第を上奏じょうそうし、叡慮えいりょを安めたてまつることを怠らなかった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三万の兵も、信長とひとつに、粛として、叡慮えいりょにこたえまつらんと無言のうちに誓った。——醍醐だいご山科やましな、宇治方面から伏見にいたるまで、半日のうちに、尾濃びのうの兵馬を見ない所はなくなった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一日もはやく叡慮えいりょを安んじ奉らねばならぬ。——時は秋、汝らの飼馬かいばも肥えておろう。各〻、信長がむねを旨として、おくるるな、たごうな、あだに死ぬな。粉骨砕身ふんこつさいしん、大君のいます都まで押し進めよ
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「匹夫下郎の処分まで、いちいち叡慮えいりょに伺うばかがあろうか」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、さいごの叡慮えいりょも決まったようであった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)