いつく)” の例文
旧字:
髪黒く、色雪の如く、いつくしく正しくえんに気高き貴女きじょの、つくろはぬ姿したのが、すらりと入つた。月をうなじけつと見えたは、真白ましろ涼傘ひがさであつた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
心もあのかおばせのようにいつくしく、われにあだし心おこさせたまわず、世のたのしみをば失いぬれど、幾百年の間いやしき血一滴ひとしずくまぜしことなき家のほまれはすくいぬ
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
霧島はただにいつくしここにして南風みんなみかぜに晴れゆきしとき
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
ああ、気高くいつくしく、冷たきマカよ。
ウスナの家 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
髪黒く、色雪のごとく、いつくしく正しくえんに気高き貴女きじょの、繕わぬ姿したのが、すらりと入った。月をうなじに掛けつと見えたは、真白まっしろ涼傘ひがさであった。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
心もあのかおばせのやうにいつくしく、われにあだし心おこさせ玉はず、世のたのしみをば失ひぬれど、幾百年いくももとせの間いやしき血一滴ひとしずくまぜしことなき家のほまれはすくひぬ。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
御堂は薄墨の雲の中に、朱の柱をつらね、の扉を合せ、青蓮せいれんの釘かくしを装って、棟もろとも、雪の被衣かつぎに包まれた一座の宝塔のようにきよいつくしくそびえて見ゆる。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
月すこし暗かりける処にて、南無妙、さしもいつくしかりけるこの女房、南無妙。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しくいつくしき明神の嚮導きょうどう指示のもとに、化鳥の類の所為しょいにもやと存じ候——
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いつくしき門のいしずえは、霊ある大魚の、左右さうに浪を立てて白く、御堂みどうを護るのを、もうずるものの、浮足に行潜ゆきくぐると、玉敷く床の奥深く、千条ちすじの雪のすだれのあなたに、丹塗にぬりの唐戸は、諸扉もろとびら両方に細めにひら
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)