厩舎うまや)” の例文
旧字:厩舍
幾個いくつかの別棟の建物があり、厩舎うまやらしい建物も、物置きらしい建物も、沢山の夫婦者の作男達のための、長屋らしい建物もあった。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一、厩舎うまやよりの情報は、船頭の天気予報の如し。関係せる馬についての予報は精しけれども、全体の予報について甚だ到らざるものあり。
我が馬券哲学 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
妻はなくて美しき娘あり。また一匹の馬を養う。娘この馬を愛してよるになれば厩舎うまやに行きてね、ついに馬と夫婦になれり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
四更の頃、彼は闇にまぎれて、閣裡かくり厩舎うまやへ這い忍んで行った。遠くからうかがうと、折もよし、番の士卒はうずくまって居眠っている様子である。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
落ちた枝をひきずって、エッサラモッサラと、幼年組が運搬うんぱんする。運ばれた枝はゴルドンの指揮しきで、厩舎うまや養禽小舎ようきんごや、洞門にうちかけられ、即成そくせいの茂林となった
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
家の主人あるじは喜んで迎へた。そして皆が厩舎うまやを出て裏庭に廻つた時は、座敷の縁側に薄縁うすべりを布いて酒が持ち出された。それを断るは此処等の村の礼儀ではなかつた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そのうちの一人が毎晩厩舎うまやに寝ずの番をし、あとの二人は厩舎の二階に寝ることになっていた。
「それじゃ、みんなは厩舎うまやの前へ行って、あそこで待っていてくれ。すぐ引っ張ってくるから」
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
リヴジー先生が或る日の午後遅く父をに来て、母の出したちょっとした夕食をとり、「ベンボー屋」には厩舎うまやがなかったので、村から馬が迎えに来るまで一服やろうと談話室へ入って行った。
離れたところに厩舎うまやがあったがそこからは馬の地を蹴る音と、それを叱咤する兵士の声とが、のべつに荒々しく聞えて来た。
沙漠の美姫 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
門はこの家のは北向きたむきなれど、通例は東向きなり。右の図にて厩舎うまやのあるあたりにあるなり。門のことを城前じょうまえという。屋敷やしきのめぐりは畠にて、囲墻いしょうを設けず。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「駄目駄目、観客としてもはいる資格がない。馬丁べっとうに連れて行ってもらえよ。厩舎うまやの通用門からはいるんだ」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その朝は、一天ぬぐうがごとく晴れわたり、さわやかな風はしずかな波にたわむれて、船出を祝うがごとくに見えた。富士男は厩舎うまやの戸を開いて諸動物に別れをつげた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
そして、彼はむちを振り振り不気味に微笑みながら、厩舎うまやの前を歩き回った。厩舎の前は泥濘でいねいの凸凹のまま、まったく凍ってしまった。コンクリートのように硬くなっていた。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
厩舎うまやの方から仕入れ馬でもあろう、板壁を荒々しく蹴る音が聞こえ、槻の木の梢からは巣ごもっている鳥の、やわらかい啼き声が落ちて来た。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そして、既成品屋の店頭人形のようにっくり返って歩く良人の高瀬理平をせきたてて厩舎うまやの方へいそいだ。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紀久子はそう考えながら、帽子を目深にかぶって裏庭から厩舎うまやのほうへと走っていった。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
露地や小路では男や女が、何やら話し合って笑ってい、犬はその間を駈け廻り、馬は、厩舎うまやでまぐさを食い、子供は喧嘩をして泣いていたりしている。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
主命もだしがたく、鎌倉へまぎれ返り、その日は疲労と困憊こんぱいに、ぬしなき屋敷の厩舎うまやで馬ととも寝くたれていたが、やがて晩をむかえ、七月の宵空に星を仰ぐと
でもしばらく経った時、厩舎うまやの横の納屋の前に、鬼火の姥の御幣ごへいそっくりの、白い姿の立ったのが見えた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
用事は、それだけの事だったので、助右衛門は、ほっとしながら、厩舎うまやの方へ、その足で廻って来た。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人々は、厩舎うまやに曳きこまれた勝馬をいたわりにゆくのでもなく、敗者の騎手を慰めに行くのでもなかった。競馬場は飽くまでも、勝者の独壇場でありかがやく者のためにある広場だった。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
周囲を廻れば五町もあろうか、主屋おもや離室はなれ、客殿、ちん厩舎うまや納屋なやから小作小屋まで一切を入れれば十棟余り、実に堂々たる構造かまえであったが、その主屋の一室に主人紋兵衛はせっていた。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
南苑なんえんたちばなには、春のよごれを降りながした雨あがりの陽が強く照りかえしていた。伶人れいじんたちが、院の楽寮がくりょうで、器楽をしらべているし、舎人とねりたちは、厩舎うまやの前にかたまって、白馬に水を飼っていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
厩舎うまやにつないでございます」
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ここの厩舎うまやひとやから、縄を解いて、放ってやった七郎というあの侍は、その後、主家の兵衛から、役に立たぬ不届き者と、家をも扶持ふちをも奪われて牢人となり、菰僧に落ちれていると聞いたが……。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
到る所に厩舎うまやがあった。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)