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原中
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はらなか
何しろ
西も
東も
分からない
原中の一
軒家に
一人ぼっちとり
残されたのですから、
心細さも
心細いし、だんだん
心配になってきました。
また、
朝のうちから
天気の
変わりそうなのを
気遣って、
出る
人も
見合わせていたので、
日の
暮れた
原中では、
一人の
影も
見えなかったのであります。
晃々とさし
昇り最早夜の
亥刻時分共思ふ頃
良原中まで來りしに最前より待設けたる雲助共松の
蔭より前後左右に
破落々々と
現れ出でヤイ/\
小童子待先刻松の尾の酒屋では
能も/\我等を
「おやおや、それはお
困りだろう。だがごらんのとおり
原中の一
軒家で、せっかくお
泊め
申しても、
着てねる
布団一
枚もありませんよ。」
そういえばこんな
寂しい
原中におばあさんが
一人住んでいるというのもおかしいし、さっき出がけに、
妙なことをいって
度々念を
押して行ったが、もしやこの
家が
鬼のすみかなのではないかしらん。