勧化かんげ)” の例文
有野村の与八が、この春から勧化かんげをして歩いたことの一つに、荒地の開拓と、ハト麦の栽培、ジャガタラいもの増産等があります。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
……非人寄場よせば勧化かんげ比丘尼のほうも残らずさらいましたが、このほうにもいなくなったなんてえのは一人もねえんです。
顎十郎捕物帳:03 都鳥 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その日から、羅漢寺の宿坊に宿とまりながら、山国川に添うた村々を勧化かんげして、隧道開鑿ずいどうかいさくの大業の寄進を求めた。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
これに煽動家の夢想する所ならんや。彼はみずから欺かざるのみならず、また人をも欺かざるなり。彼は自家の胸中を吐くの外、他を勧化かんげするの術を知らざるなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
この団子でも石になれば、それで村方勧化かんげでもしようけれど、あいにく三界に家なしです。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
客「お神輿みこしでも待ちゃアしめえし、お廻りになるってやアがる、殴るよ本当に、仲どんはめちまや、可愛相に青脹れで、頭髪あたまッちまいねえ、衣の勧化かんげぐれえはしてやらア」
何で寂心が三河に行ったか、堂寺建立の勧化かんげの為だったか何様か、それは一切考え得るところが無いが、抖擻とそう行脚のちなみに次第次第三河の方へまで行ったとしても差支はあるまい。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
牢舎ひとやは罪人に埋められ、路傍には、浮浪者の群れのみちているこの現世地獄を——そのままわが住持する寺なりといって——寒暑もなく、師鉄眼のやった通りな血みどろの勧化かんげをつづけ
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただし貉が勧化かんげの使僧をみ殺して、代ってこれに化けたというかちかち山式風説は認めず、中途で遷化せんげした和尚の姿を借りて、山門再建の遺志を果したという他の一説の方をっており
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
かの尼が村じゅうを勧化かんげして更に修覆したのだとも聞いていた。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その後加茂の川原や、小松殿、勝尾寺かちおでら、大谷など、その住所は改まるとも勧化かんげ怠りなく遂に末法相応浄土念仏まっぽうしょうおうじょうどねんぶつが四海のうちに溢るるに至った。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「そして……あの坊さんは知った方。何なの、内へ勧化かんげにでも来たことのある人なの。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
老人も至極道理もっとものことゝ、ある住職にたのみ、岩次を仏門に帰依いたさせますると、それから因果塚建立という文字もんじを染ぬきました浅黄あさぎのぼりを杖にいたし、二年余も勧化かんげにあるき
法然の勧化かんげに従って念仏を進め、上の醍醐に無常臨時の念仏をすすめ、その他七カ所に不断念仏を興隆した。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
出家のことばは、いささか寄附金の勧化かんげのように聞えたので、少し気になったが、煙草たばこの灰を落そうとして目にまった火入ひいれの、いぶりくすぶった色あい、マッチのもえさしの突込つッこ加減かげん
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
度胸を据えなければならない、腹が減ってはいくさができない道理、ですから、ウンと食べて、ウンと働きなさいと、こういう勧化かんげのために、この通り百姓大腹帳というのをこしらえて
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そこに集まった面々は御免の勧化かんげであり、縄衣裳なわいしょうの乞食芝居であり、阿房陀羅経あほだらきょうであり、仮声使こわいろづかいであり、どっこいどっこいであり、猫八であり、砂文字すなもじであり、鎌倉節の飴売あめうりであり
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ついそねみ心が起ってその勧化かんげなどを聴かず、でも自分の出離の途といっては、いまだ定まった解決もつかずに籠っていたが、或時法然の弟子の法蓮房に会って、念仏の法門を話した時に
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それを切り崩して金儲けをもくろむとは言語道断ごんごどうだん……一体、仏寺なるものが、その祖師の恩恵によって過分の待遇を受け、広大な領分を持ち、諸方の勧化かんげむさぼりながら、なおそれにあきたらず
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)