出盛でさか)” の例文
それが向うでは東京廻しといって最下等品だ。その代り春子の出盛でさかりは一升五、六銭で買えるようになる。寒子は一升四十銭位だ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
この部落に住んでいる人間がそうがかりになった上に、その何十倍か何百倍のクーリーを使っても、豆の出盛でさかりには持て余すほど荷が後から後からと出てくる。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その上、宵宮よみやにしてはにぎやか過ぎる、大方本祭ほんまつり? それで人の出盛でさかりが通り過ぎた、よほど夜更よふけらしい景色にながめて、しばらく茫然ぼうぜんとしてござったそうな。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
失ひ花見といへば上野か隅田すみだ又は日暮里飛鳥山人の出盛でさか面白おもしろき所へ行が本統ほんとうなるに如何常より偏屈へんくつなる若旦那とは言ながらとほき王子へ態々行夫もにぎはふ日暮里をばきらひて見榮みばえなき土地とちの音羽を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ざつ十日とをかばかりおくれてますです。ゆきですからな。かぜによつては今夜こんやにも眞白まつしろりますものな。……もつと出盛でさかりのしゆんだとつても、つきころほどにはないのでしてな。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
湿ったページを破けないように開けて見て、始めて都には今洪水こうずい出盛でさかっているという報道を、あざやかな活字の上にまのあたり見たのは、何日いつかの事であったか、今たしかには覚えていないけれども
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)