ひょう)” の例文
(いよいよ此奴こやつを!)と日置正次、引きしぼり保った十三束三伏ぞくみつぶせ柳葉やなぎはの箭先に胸板を狙い、やや間近過ぎると思いながらも、ひょうふっとばかり切って放した。
弓道中祖伝 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
矢比やごろを測つてひょうと放てば。竄点ねらい誤たず、かれが右のまなこ篦深のぶかくも突立つったちしかば、さしもにたけき黄金丸も、何かはもってたまるべき、たちま撲地はたと倒れしが四足を悶掻もがいてしんでけり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
うそが多くてずるく立ち回ることを、わたしの郷里のほうではごまをすると言いますが、だれのいたずらからか、この兵次郎さんには「ごまひょうさん」というあだ名がついていました。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
何と、雪白せっぱく裸身の美女を、こずえまとにした面影おもかげであらうな。松平大島守みなもと何某なにがし、矢の根にしるして、例の菊綴きくとじあおい紋服もんぷく、きり/\と絞つて、ひょうたが、射た、が。射たが、薩張さっぱり当らぬ。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
みちすがらある森の木陰をよぎりしに、忽ち生茂おいしげりたる木立のうちより、ひょうト音して飛び来る矢あり。心得たりと黄金丸は、身をひねりてその矢をば、発止はっしト牙にみとめつ、矢の来しかたきっト見れば。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)