“候（そうろ）”の例文

「誰やらん見知らぬ武士（もののふ）が、ただ一人従者（ずさ）をもつれず、この家に申すことあるとて来ておじゃる。いかに呼び入れ候（そうろ）うか」

武蔵野 (新字新仮名) ／山田美妙(著)

生も死も、宇宙万般の現象も尋常茶番となって了う。哲学で候（そうろ）うの科学で御座るのと言って、自分は天地の外に立（たっ）ているかの態度を以てこの宇宙を取扱う。

牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) ／国木田独歩(著)

やがて筑前どのが御登城の時刻も近づいて候（そうろ）うとある。信長は宗易をのこして天守閣へ立ち去った。

新書太閤記：06 第六分冊 (新字新仮名) ／吉川英治(著)

要するに結論（けつろん）を急ぐなかれ、死ぬとも生きるとも早くどうにかきめてもらいたいというのは凡夫（ぼんぷ）のいう事に候（そうろ）う。いつかは消える燈火（ともしび）にしても、あおいで消す必要はなかるべく候う。

廃める (新字新仮名) ／伊藤左千夫(著)

母にて候（そうろ）ふ者子無きことを悲み、此十王堂に一七日籠（こも）り、満ずる暁（あかつき）に霊夢の告（つげ）あり、懐胎して十八月にしてそれがし誕生せしに、骨柄（こつがら）たくましく面の色赤く、向ふ歯あつて髪はかぶろなり。

山の人生 (新字新仮名) ／柳田国男(著)

「清（しん）の党の旗頭（はたがしら）、葛西ノ忠太候（そうろ）うなり、お書き留めくだされい」

あさひの鎧 (新字新仮名) ／国枝史郎(著)

何事か、一大事な候（そうろ）うずらん、ただいま、院の宿直（とのい）より早馬にてのお召しにこそあるなれ、いそぎ物（もの）の具（ぐ）つけて、揃（そろ）い庭（ば）へ渡られそうらえ。早く、はやく——と、促すのだった。

途中、清風山の群賊、道をはばめて、檻車もろとも花栄、劉高の身をも奪い去って候（そうろ）う。

新・水滸伝 (新字新仮名) ／吉川英治(著)

不思議の候（そうろ）うぞ。北越の一族がかくも早く来たり会すなどは、まったく八幡（はちまん）のご加護によろう。新田ノ庄を出ていらい、われには事ごと、吉瑞（きちずい）がある。行くところで味方は勝とう。戦（いくさ）は勝つ。

私本太平記：08 新田帖 (新字新仮名) ／吉川英治(著)

孫乾も勇み立って、「心得て候（そうろ）う」とばかり直ちに駒をとばして行った。

三国志：06 孔明の巻 (新字新仮名) ／吉川英治(著)

「なにしに否やの候（そうろ）うべき」

江戸三国志 (新字新仮名) ／吉川英治(著)

「候（そうろ）うべき——」

松のや露八 (新字新仮名) ／吉川英治(著)