伊皿子いさらご)” の例文
そうして、もっとも危険区域とされた三田の藩州附近、伊皿子いさらご二本榎にほんえのき、猿町、白金辺を持場として割当てられたのが荘内藩であります。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「井浚いがイスラエルか? 東京には伊皿子いさらごというところがあるぜ。始終説教をやっている丈けあって、こじつけの巧いこと驚いてしまう」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
もう先からよ、———あの人も伊皿子いさらごへ声楽を習いに行っているの。顔はあんなににきびだらけで汚いけれど、歌を
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
頻繁ひんぱん行方ゆくへ不明になることに思ひ當りました——芝伊皿子いさらごの荒物屋の娘お夏、下谷竹町の酒屋の妹おえん、麻布あざぶかうがい町で御家人の娘おかう——、數へて見ると
山のおじが雲からのぞく。眼界濶然かつぜんとして目黒にひらけ、大崎に伸び、伊皿子いさらごかけて一渡り麻布あざぶを望む。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まだ伊皿子いさらごまでは行きますまい。すぐ、足のはやい野郎をやって、呼び戻して参りましょう」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
支倉の為に忌わしい病気を感染された小林貞は、恥かしい思いをしながら伊皿子いさらごの某病院で治療を受け、トボ/\と家路に向ったが、彼女はふと道端に佇んでいた男を見ると
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
總領と名のる火の玉がころがるとは知らぬか、やがて卷きあげて貴樣たちに好き正月をさせるぞと、伊皿子いさらごあたりの貧乏人を喜ばして、大晦日を當てに大呑みの場處もさだめぬ。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今日こんにちでは高輪のあたりも開け切って、ほとんど昔のおもかげを失ってしまったが、江戸の絵図を見ればすぐにわかる通り、江戸時代から明治の初年にかけて高輪や伊皿子いさらごの山の手は
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大沼竹渓の墳墓は芝区三田台裏町みただいうらまちなる法華ほっけ宗妙荘山薬王寺の塋域えいいきにある。今茲ことし甲子の歳八月のある日、わたくしは魚籃坂ぎょらんざかを登り、電車の伊皿子いさらご停留場から左へ折れる静な裏通に薬王寺をたずねた。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そして京姫は祖先の千姫と同じように、一生暗い運命を背負わされて、美しさを伊皿子いさらごの化物屋敷に埋め、世の嘲笑と指弾の的になって淋しい一生を終りました。
二三年前に上野の音楽学校を卒業したる婦人が、自分の家でピアノと声楽を教えると云う話を聞き、この方は毎日芝の伊皿子いさらごまで一時間ずつ授業を受けに行くのでした。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
総領と名のる火の玉がころがるとは知らぬか、やがて巻きあげて貴様たちに好き正月をさせるぞと、伊皿子いさらごあたりの貧乏人を喜ばして、大晦日を当てに大呑みの場処もさだめぬ。
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
江戸表の芝の伊皿子いさらごを引き払って、この小倉へ移って来るまでも、そういう女性が彼の陰にいたことなどは、角兵衛はつい先頃まで知らずにいたので、自分の迂濶うかつに呆れると共に
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
總領そうりようのるたまがころがるとはらぬか、やがてきあげて貴樣きさまたちに正月しやうぐわつをさせるぞと、伊皿子いさらごあたりの貧乏人びんぼうにんよろこばして、大晦日おほみそかてに大呑おほのみの塲處ばしよもさだめぬ。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
伊皿子いさらごの「月のみさき」の家へ帰ってから、小次郎は、あるじの岩間角兵衛にたずねた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余五郎どのの死骸が発見されたのは、例の芝伊皿子いさらごの寺の裏山でした。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
佐々木小次郎が江戸の住居は、細川藩の重臣で岩間角兵衛が邸内の一棟ひとむね——その岩間の私宅というのは、高輪たかなわ街道の伊皿子いさらご坂の中腹、俗に「月のみさき」ともいう地名のある高台で、門は赤く塗ってある。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)