二言三言ふたことみこと)” の例文
批評を加える勇気などはどこからも出て来なかった。彼は黙っていた。お延はその間にまたお秀と二言三言ふたことみことほど口をいた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
寝言のようなことを二言三言ふたことみことつぶやいたかと思うと、かわいそうに、泰二君はとうとう気力がつきて、クナクナと、その場にたおれてしまいました。
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
光秀はすぐさりないおもてに返っていた。そして秀吉と、なお二言三言ふたことみこと、気軽な立ちばなしを交えていたが、やがて
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
言いたいこと乃至ないし言うべきことは、最初の二言三言ふたことみことで済んでおり、あとは不愛想な沈黙があるだけだ。しかしチェーホフは、自分が冷たく見えることをおそれる。
お銀様もそれに答えて二言三言ふたことみことなにか言いましたが、その声がやがて泣き声になってしまいました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかし母親がまじめな顔をして、何か二言三言ふたことみこと云いわけをすると、間もなく納得したらしく、組んでいた腕をほどいて元気よくうなずきながら、靴をスポンスポンと脱いだ。
人の顔 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その道士はすぐその先で向うから来た道士と何か二言三言ふたことみこと交えてからいってしまった。初めの道士と言葉を交えていた道士がやっと近くに来た。それは同窓の友の一人であった。
成仙 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
巡査が二言三言ふたことみこと、不心得を諭すと、口ごもりながら、詫言をいうのを常とした。
身投げ救助業 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
下島は二言三言ふたことみこと伊織と言い合っているうちに、とうとうこう云う事を言った。
じいさんばあさん (新字新仮名) / 森鴎外(著)
狭山は女を顧みて、二言三言ふたことみこと小声に語合かたらひたりしが
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
二言三言ふたことみことで本當の事情を分らせてあげます。
伝八郎は、それから二言三言ふたことみこと、誘ってみたが、内匠頭は、上野介の行為や経緯いきさつなどには一言も触れないのである。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
代助も二言三言ふたことみこと此細君からはなしかけられた。が三分さんぷんたないうちに、り切れなくなつて、すぐ退却した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
髪切虫かみきりむしのヒゲみたいに鋭いかれの感覚は、そこへ来た男と宗理の対話を二言三言ふたことみこと聞いただけで
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
入口いりぐちの書生部屋を覗き込んで、敷居のうへに立ちながら、二言三言ふたことみこと愛嬌を云つたあと、すぐ西洋の方へて、けると、あによめがピヤノの前に腰を掛けて両手をうごかして居た。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とすりよると、果心居士かしんこじ白髯はくぜんにつつまれたくちびるからひそやかに、二言三言ふたことみこと秘策ひさくをささやいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なにがし二人ふたりとは、かねてからなかわるかつた。其時なにがしは大分酒気を帯びてゐたと見えて、二言三言ふたことみこといひ争ふうちにかたないて、いきなり斬りけた。斬りけられた方はあにであつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
二言三言ふたことみこと、その礼をのべている時だった。なにごとか、にわかに、陣々に脈々みゃくみゃくたる兵気がみなぎってきたかと思うと、本陣へ京都からの早馬の急使がきて、秀吉に、時ならぬ急報をつげた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)