きゅう)” の例文
曠野の一きゅうに、一の陣屋がある。いわゆる最前線部隊である。この小部隊は、点々と横に配されて、十二ヵ所の長距離に連っている。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
窮するとは道に窮するのいいに非ずや。今、きゅう、仁義の道を抱き乱世の患に遭う。何ぞ窮すとなさんや。もしそれ、食足らず体つかるるを
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
子曰く、ゆうしつ(雅頌に合せず)、奚為なんすれきゅうが門に於てせん。門人子路を敬わず。子曰く、由は堂にのぼれるも、未だ室に入らざるなり。(一五)
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
ペルシア語の小山 kuh(クフ)は「きゅう」や「こう」に縁がある。アイヌの「コム」もやや似ている。この「コム」は小山であり、またこぶである。
言葉の不思議 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
きゅう、お前は何でそんなに、いつまでもあくせくとうろつきまわっているのだ。そんなふうで、おべんちゃらばかりいって歩いているのではないかね。」
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
支那でも孔子名はきゅう、字は仲尼ちゅうじといいますが、この丘と仲尼とを併せたものが名字であります。日本でも支那でも名というものはむやみに他人から呼ぶべきものでない。
名字の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
家主、職は柱下に在りといえども、心は山中に住むが如し。官爵は運命に任す、天の工あまねし矣。寿夭じゅよう乾坤けんこんに付す、きゅういのることや久し焉。と内力少し気燄きえんを揚げて居るのも、ウソでは無いから憎まれぬ。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「だが、与八さん、おめえは感心だよ、おめえの真似まねはできねえ……まあ、早い話がおめえは聖人だね、支那のきゅうという人と同格なんだね、聖人……大したもんだよ、だが、聖人にしちゃあおめえ、少しが抜けてらあ……」
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
きゅうの森 秋ふけて
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
「あれ、あの石橋しゃっきょうの欄干に腰かけて、さっき散々さんざん、わが輩を苦しめやがったさい坊主と行者のきゅうしょう一が、まだ執念ぶかく見張っている」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「十室のゆう、必ず忠信きゅうがごとき者あり。丘の学を好むにかざるなり。」という師の言葉を中心に、子貢は
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
む。子路祷らんことを請う。子曰く、これ有りや。子路こたえて曰く、あり、るいなんじを上下の神祇しんぎいのるといえり。子曰く、きゅうの祷ること久し。(述而、三五)
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
見てもらっているのだ。それが私の教えの全部だ。きゅうという人間は元来そういう人間なのだ。
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「ふウむ。さいきゅう。そんなものが恐ろしいのか。とにかく、もうすこし話をきかせてくれ。その代りあっちで粟粥を一杯ご馳走になるぜ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この上流に、七きゅうをめぐらして、一山をなしている山地があります。蓮華れんげの如く、七丘の内は盆地で、よく多数の兵をかくすことができる。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高松山の一きゅうには、徳川方の旌旗せいきが満ちている。大久保七郎右衛門、同苗どうみょう治左衛門の兄弟も、その中に陣していた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いううちにも、すでに彼方の石橋の上では、きゅう行者とさい坊主が、こなたの二人を見つけたか、遠目にも巨眼熒々けいけい、いまにも斬ッてかかってきそうな構えを示していた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)