上座じょうざ)” の例文
一ばん上座じょうざに、まっ白いひげをはやしたりっぱなおじいさんが、どっしりと腰かけていました。この人がシンドバッドだったのです。
笑いながら押し合ったりみ合ったりしているうちに、謙譲している男が、引きられて上座じょうざに据えられるのもある。なかなかの騒動である。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかし、間もなくその紋太夫は、主君綱条つなえだして、これへ見えた。——わが子ながら綱条は当主である、老公は席を分けて、上座じょうざを与えた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことに見ず知らずの年長者ががんと構えているのだから上座じょうざどころではない。挨拶さえろくには出来ない。一応頭をさげて
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
欣弥、不器用にあわただしく座蒲団ざぶとんを直して、下座しもざに来り、無理に白糸を上座じょうざに直し、膝を正し、きちんと手をつく。
錦染滝白糸:――其一幕―― (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
文「う致して、あとからまいって上座じょうざは恐入る、私は何分なにぶんにも此の寒さにこたえられないから、なるたけ囲炉裏の側へ坐らして貰いたい、今日の寒気かんきは又別段ですなア」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その床の間の両側へみな、向いあって、すわっていた。上座じょうざは師匠の紫暁しぎょうで、次が中洲の大将、それから小川の旦那と順を追って右が殿方、左が婦人方とわかれている。
老年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
批評家等がたれも許しもせぬのに、作家よりも一段上座じょうざに坐り込んで、其処から曖昧あやふやな鑑識で軽率に人の苦心の作を評して、此方の鑑定に間違いはない、其通り思うて居れ
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
いろり附近まわりに四人の男女が控えてた。男は怪量を上座じょうざしょうじてから四人をり返った。
轆轤首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その膳と並んだ、納戸よりの上座じょうざが、これも、今日の正客の産婆さんで、書院窓の方に、おしようばんの三太郎おじさんがすわりました。おじさんから下座しもざの方へならんで洋一とフミエ。
柿の木のある家 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
上座じょうざとして、表面に立てていたのだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
と小芳がいたあらたまって、三指を突いた時、お妙は窮屈そうに六畳の上座じょうざへ直されていたのである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
といっただけで、久米一、別に上座じょうざも与えず、ただ肉の厚い膝を、いやいや直しただけである。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と無理にもとの茶屋へ連戻り、上座じょうざへ直し、慇懃いんぎんに両手を突き
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)