三棟みむね)” の例文
三棟みむねある建物のうしろには竹の大藪おおやぶがめぐらしてあって、東南の方角にあたる石垣いしがきの上には母屋もやの屋根が見上げるほど高い位置にある。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この路を去る十二三町、停車場よりの海岸に、石垣高く松をめぐらし、廊下でつないで三棟みむねに分けた、門には新築の長屋があって、手車の車夫の控える身上しんしょう
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
四十男しゞふをとこ水呑百姓みづのみひやくしやうおもつたのは、學校がくかうより十町ばかりだつて松林まつばやしおく一構ひとかまへ宅地たくちようし、米倉べいさう三棟みむねならべて百姓ひやくしやう池上權藏いけがみごんざうといふをとこで、大島小學校おほしませうがくかう創立者さうりつしや恩人おんじん
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そこには藁屋根わらやね掘立小舎ほつたてごや三棟みむねあつた。岩崎組、平野組、山田組と三つに分つてゐたのであつた。私はそのとつ附きの平野組に入つて行つた。人夫達は皆仕事に出払つて一人もゐなかつた。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
母屋おもやは入船町の一角を占めて、間口十何間の繁昌、使つて居る番頭小僧、日雇、人足も夥しいことですが、裏には三棟みむねの土藏があり、その土藏の間に、さゝやかな離屋はなれが挾まれ、その離屋の中に
玉川砂礫ざりを敷きたるこみちありて、出外ではづるれば子爵家の構内かまへうちにて、三棟みむね並べる塗籠ぬりごめ背後うしろに、きりの木高く植列うゑつらねたる下道したみちの清く掃いたるを行窮ゆきつむれば、板塀繞いたべいめぐらせる下屋造げやつくりの煙突よりせはしげなるけふり立昇りて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そこは三棟みむねの高い鱗葺こけらぶきの屋根の見える山村氏の代官屋敷を中心にして、大小三、四十の武家屋敷より成る一区域のうちである。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
三か所の波止場はとばも設けられ、三棟みむねばかりの倉庫も落成した。内外の商人はまだ来て取り引きを始めるまでには至らなかったが、なんとなく人気は引き立った。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)