三尺さんじゃく)” の例文
重二郎も振返り/\出てきました。其の跡へ入って来たのは怪しい姿なりで、猫のひゃくひろのような三尺さんじゃくを締め、紋羽もんぱ頭巾ずきんかぶったまゝ
何と御坊ごぼう。——資治卿が胴袖どてら三尺さんじゃくもしめぬものを、大島守なりで、馬につて、資治卿の駕籠かごと、演戯わざおぎがかりで向合むかいあつて、どんなものだ、とニタリとした事がある。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
部屋は普通家屋の内部に見られるような方形ほうけいをなしたものではなく、三角なりにゆがんでいて、扉のとれたけ放しの入口から、真直まっすぐに幅三尺さんじゃくばかり、長さ一、二けんほどが板敷。
勲章 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
三尺さんじゃく帯の腰に挟んである草履をおろして、ビタつく足を突っかけた。——そして、流れのそばを去りかけると、ふいに、こらえていた笑いを放つような声が、頭の上から彼を驚かした。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三尺さんじゃくの間へはさんで来た物に巻いて有る手拭をくる/\と取り、前へ突付けたのは百姓の持つ利鎌とがまさびの付いたのでございます。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
三尺さんじゃくを腰低く前にて結びたるあそにんらしき男一人、両手は打斬うちきられし如く両袖を落して、少し仰向あおむき加減に大きく口を明きたるは、春の朧夜おぼろよ我物顔わがものがお咽喉のど一杯の声張上げて投節なげぶし歌ひ行くなるべし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と云いながらずっと出た男の姿なりを見ると、紋羽もんぱの綿頭巾をかむり、裾短すそみじか筒袖つゝそでちゃくし、白木しろき二重廻ふたえまわりの三尺さんじゃくを締め、盲縞めくらじまの股引腹掛と云う風体ふうてい
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
旱魃ひでりの氷屋か貧乏人が無尽むじんでも取ったというようににやり/\と笑いながら、懐中から捲出まきだしたは、鼠色だか皮色だか訳の分らん胴巻様どうまきよう三尺さんじゃくの中から
と云いながら四辺あたりを見ましたが、手頃の棒が有りませんから、三尺さんじゃくを締め直して梯子のあがはなまで来ると、上り端に六尺や半棒木太刀などが掛って居ります。
娘はしきりに新吉の顔を横眼で見惚みとれて居ると、う云う事でございますか、お久の墓場の樒の揷して有る間から一匹出ました蛇の、長さ三尺さんじゃくばかりもあるくちなわが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)