三十一文字みそひともじ)” の例文
竹田は詩書画三絶を称せられしも、和歌などはたくみならず。画道にて悟入ごにふせし所も、三十一文字みそひともじの上には一向いつかうき目がないやうなり。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
三十一文字みそひともじなりに現われたり、感情があって、しかして後に平仄ひょうそくの文字が使用されるのだが、あの子供のは全然それが逆に行っています。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かつて優雅なる三十一文字みそひともじによって、表現していたような情熱と感覚とを、織り込もうとしていたものと思われるのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
佐佐木氏は、三十一文字みそひともじの講釈と、ビスケツトを食べるために、母親おふくろが態々産みつけたらしい口もとをつぼめて言つた。夏目博士はにやりとした。
「実はな平次親分、私は少しばかり道楽があるのじゃよ。三十一文字みそひともじだ、歌を作ると言ったほうが早くわかるだろう」
何と云う歌か忘れてしまったが、決して三十一文字みそひともじたぐいではない、もっと活溌かっぱつで、もっと俗耳ぞくじに入りやすい歌であった。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
織部正もどうやら三十一文字みそひともじをそれらしい形につらねることが出来るようになったので、何事に依らず習いたては熱中するものであるから、折さえあると
但し今の世間に女学と言えば、専ら古き和文を学び三十一文字みそひともじの歌を詠じて能事のうじおわるとする者なきに非ず。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
今日の現実は、風流なすさびと思われていた三十一文字みそひともじを突破して、生きようと欲する大衆の声を工場から、農村から、工事場・会社・役所から、獄中からまで伝えて来ている。
花より団子の青野山などと三十一文字みそひともじにさら/\したためて、男の心をとろかしたものだ
その手紙の終に諷諭ふうゆの意を寄せたらしく書き添えてある兄の三十一文字みそひともじを繰返して見た。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その頃私がぽつぽつ三十一文字みそひともじを並べましたので、亀井家で何かお集りのあった時、お父様が福羽氏にお目にかかって、私のことをお頼みになったのです。無論お兄様とも相談の上でした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
どうでもかうでも上手でも下手でも三十一文字みそひともじ並べさへすりや、天下第一の者であつて、秀逸と称せらるる俳句にも、漢詩にも、洋詩にもまさりたる者と思ひ候者にや、その量見が聞きたく候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
閣下は三十一文字みそひともじを一々勘定して嵌め込む手堅い歌人らしい。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「味噌一漉? ああ三十一文字みそひともじか。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まちるあな覺束おぼつかなの三十一文字みそひともじ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「一体和歌といふものは、諸君も御存じかも知らんが、三十一文字みそひともじといつて、ちやんと三十一字から成立なりたつてゐる。こゝに一つ例をあげると……」
三十一文字みそひともじたえなる調べもて編み出し、水茎のあとうるわしく草紙物語を綴る婦人も珍しいとはしないが、婦人にして漢詩をよくするという婦人は極めて珍しい。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
遊芸和文三十一文字みそひともじなどの勉強を以て女子唯一の教育と思うは大なる間違いなる可し。余曾て言えることあり。男子の心は元禄武士の如くして其芸能は小吏の如くなる可しと。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
どこの国でも学名は本名でないのだが、我邦わがくにでは精細を旨とするの余り、二階三階を積重ね穴蔵をほり下げて、時には三十一文字みそひともじ背競せいくらべをしようという長い名が作られている。
歌が一番善いものならばどうでもこうでも上手でも下手でも三十一文字みそひともじ並べさえすりゃ天下第一のものであって、秀逸と称せらるる俳句にも漢詩にも洋詩にもまさりたるものと思い候ものにや
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
「おや、しゃれたものを描くんだね、三十一文字みそひともじかい」
百花園 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
あわれな三十一文字みそひともじなどは残ってもいないのであった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
三十一文字みそひともじ9・12(夕)