百花園ひゃっかえん
紫苑が咲き乱れている。 小逕の方へ日傘をさしかけ人目を遮りながら、若い女が雁来紅を根気よく写生していた。十月の日光が、乾いた木の葉と秋草の香を仄かにまきちらす。土は黒くつめたい。百花園の床几。 大東屋の彼方の端で、一日がかりで来ているらしい …
題名が同じ作品
百花園 (新字新仮名)永井荷風 (著)