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ほくび
勘次は
菜切庖丁を
取出して、
其高い
蜀黍の
幹をぐつと
曲ては
穗首に
近く
斜に
伐つた。
穗は
勘次の
手に
止つて
幹は
急に
跳ね
返つた。さうして
戰慄した。
それでもそれ
丈の
收入の
外に
食料の
減ずることが
貧乏な
世帶には
非常な
影響なのである。それが
稻の
穗首の
垂れる
頃からお
品は
思案の
首を
傾げるやうになつた。
周圍の
臺地からは
土瓶の
蓋をとつて
釣瓶をごつと
傾けたやうに
雨水が一
杯に
田に
聚つて
稻の
穗首が
少し
浸つた。
田圃も
堀も
一つに
成つた
水は
土瓶の
口から
吐き
出すやうに
徐に
低い
田へと
落る。