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ふりはな
奪んとなすにぞ又七は長助に
聲を掛け
盜人々々と
呼はりければ長助は
先刻より
外一人の男と
組合居たるが此聲を聞て金を
取れては
大變と
振放し又七の
懷中へ手を
入たる男の
横面を
私を
起して
下され、
何故か
身躰が
痛くてと
言ふ、それは
何時も
氣の
立つまゝに
驅出して
大の
男に
捉へられるを、
振放すとて
恐ろしき
力を
出せば
定めて
身も
痛からう
生疵も
處々にあるを
振離すと、
床まで落ちず、宙ではらりと、影を乱して、
黒棚に、バツと乗る、と
驚駭に
衝と
退つて、夫人がひたと
遁構への
扉に
凭れた時であつた。
振離すと、
床まで
落ちず、
宙ではらりと、
影を
亂して、
黒棚に、バツと
乘る、と
驚駭に
衝と
退つて、
夫人がひたと
遁構への
扉に
凭れた
時であつた。