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さいりう
半纏着は、
水の
淺い
石を
起して、
山笹をひつたり
挾んで、
細流に
岩魚を
預けた。
溌剌と
言ふのは
此であらう。
水は
尾鰭を
泳がせて
岩に
走る。そのまゝ、すぼりと
裸體に
成つた。
去ぬる
年、
中泉から
中尊寺に
詣でた六
月のはじめには、
細流に
影を
宿して、
山吹の
花の、
堅く
貝を
刻めるが
如く
咲いたのを
見た。
彼は
冷き
黄金である。
此は
温かき
瑠璃である。
杜若が、
持ぬしの
札も
立たずに
好きなまゝ
路傍の
其の
細流に
露を
滴らして
居るのである。