)” の例文
いつものように、おかあさんは、洋服屋ようふくやへこられて、こんどは、せい一が、新学期しんがっきからるためのあたらしいふくを、おたのみなさったのでした。
窓の内と外 (新字新仮名) / 小川未明(著)
庵主あんじゅさんは、よそゆきの茶色ちゃいろのけさをて、かねのまえにつと、にもっているちいさいかねをちーんとたたいて、おきょうみはじめた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
そのまっくらなしまのまん中に高い高いやぐらが一つ組まれて、その上に一人のゆるふくて赤い帽子ぼうしをかぶった男が立っていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
雨がしきりなので、かへるときには約束通りくるまを雇つた。さむいので、セルのうへへ男の羽織をせやうとしたら、三千代は笑つてなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なにかでつくったみののようなものが、彼のからだにせられた。その時から、忍剣がなにをきいても、さる返辞へんじをしなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
土手の上には笠をた旅人が一人小さく画かれてある。かういふ景色の処は実際にあるけれども、画に現はしたものはほかにない。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
前々ぜん/\より述べきたりしが如き衣服いふく飮食いんしよくを採り、竪穴に住ひ、噐具を用ゐたる人民じんみん、即ちコロボックル、の日常生活にちじようせいくわつは如何なりしか
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
……をんなは、薄色縮緬うすいろちりめん紋着もんつき單羽織ひとへばおりを、ほつそり、やせぎすな撫肩なでがたにすらりとた、ひぢけて、桔梗色ききやういろ風呂敷包ふろしきづつみひとつた。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「おやおや、それはおこまりだろう。だがごらんのとおり原中はらなかの一軒家けんやで、せっかくおもうしても、てねる布団ふとんまいもありませんよ。」
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
法被はつぴてらとも棺桶くわんをけいた半反はんだん白木綿しろもめんをとつて挾箱はさんばこいれた。やが棺桶くわんをけ荒繩あらなはでさげてあかつちそこみつけられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それは現世げんせですることで、こちらの世界せかいでは、そなたもとおり、衣服きものがえにも、頭髪おぐし手入ていれにも、すこしも人手ひとでらぬではないか。
生中なまなかこがれて附纒つきまとふたとて、れてはれるなかではなし、可愛かあいひと不義ふぎせてすこしもれが世間せけんれたらなんとせう
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
というのは、ママがきょうせてやろうとおもったシャツは、みんなまだ洗濯屋せんたくやへ行っていて、夕方ゆうがたでなければ返ってなかったからである。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
彼我にふ。完き生涯とすぐるゝ徳とはひとりの淑女をさらに高き天に擧ぐ、そののりに從ひて衣を面帕かほおほひつくる者汝等の世にあり 九七—九九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
猿羽織さるばおりつて、とうさんの田舍ゐなか子供こどもは、おさるさんのそで羽織はおりのやうなものをました。さむくなるとそれをました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
その翌二十八日大林入口のシムラという村を過ぎてはば四里の大林を一直線に横ぎってビチャゴリという山川の岸にある村にて宿りました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
かくてもあられねばつまたる羽織はおりをつとくびをつゝみてかゝへ、世息せがれ布子ぬのこぬぎて父の死骸しがいうでをそへてなみだながらにつゝみ脊負せおはんとする時
すると次の間に居りました客が出て参りました。黒の羽織に藍微塵あいみじんの小袖を大小を差し、料理の入った折を提げて来まして
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そしてその活人形いきにんぎょうおどりを見ようとおもって、町の人はもとより、近在きんざいの人まで、うつくしくかざって、町のにぎやかな広場に集ってきました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
透明人間とうめいにんげんているナイト・ガウンが、はげしくぶるぶるとふるえた。そのときのことを思いだして、もういちどはらをたてているらしかった。
すれば、當國このくに風習通ならはしどほりに、かほわざかくさいで、いっち晴衣はれぎせ、柩車ひつぎぐるませて、カピューレット代々だい/\ふる廟舍たまやおくられさッしゃらう。
漸くに二人し事なれば吉之助にせる物なく其夜はみぎの三布蒲團を吉之助に着せ夫婦は夜中やちう辻番つじばんだいて夜をあかしけれども是にては主人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのこん水干すゐかんをとこは、わたしをごめにしてしまふと、しばられたをつとながめながら、あざけるやうにわらひました。をつとはどんなに無念むねんだつたでせう。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かれくびにはちひさい腫物はれもの出來できてゐるので、つね糊付のりつけシヤツはないで、やはらかな麻布あさか、更紗さらさのシヤツをてゐるので。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「さあ、りもん着更へて。……」と早口をして、白メリンスの兵兒帶へこおびに手をかけると、追ひ剥ぎのやうに竹丸のヨソイキの着物を脱がしかけた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
きちちゃんが、去年きょねん芝居しばいんだときだまってとどけておくんなすったお七の衣装いしょう、あたしにろとのなぞでござんしょう」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
粗末そまつきれ下衣したぎしかてゐないで、あしにはなにかず、落着おちついてゐて、べつおどろいたふうく、こちらを見上みあげた。
関翁を先頭せんとうにどや/\入ると、かたばかりのゆか荒莚あらむしろを敷いて、よごれた莫大小めりやすのシャツ一つた二十四五の毬栗頭いがぐりあたまの坊さんが、ちょこなんとすわって居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それから、かや、まき、とべらなど常緑樹じようりよくじゆ發芽はつが最後さいご五月ごがつ上旬頃じようじゆんごろには、すべての樹木じゆもくはるつけををはつて、ついでなつ生活せいかつそなへをします。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
「それがじょうならばどのように嬉しかろう。その嬉しさにつけても又一つの心がかりは、数ならぬわたくしゆえにお身さまによしない禍いをしょうかと……」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
道子みちこ自分じぶん身近みぢか突然とつぜんしろヅボンにワイシヤツををとこ割込わりこんでたのに、一寸ちよつと片寄かたよせる途端とたんなんとつかずそのかほると、もう二三ねんまへことであるが
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
動物園のおぢさん「あるときしろ夏服なつふく巡査じゆんさが、けんなんかでこのとらをおどかしたことがありました。それからといふものしろふく巡査じゆんさるとおこります」
まどガラスの中には、小さな人形にんぎょうが三つ、赤やみどりふくて、まるで、ほんとに生きているようだった。
そして三年ののちに土をせる。土地の所有者は其れを拒む事が出来ない習慣であると云ふ。道理で見渡す限り点点てんてんとして、どのはたにも草におほはれた土饅頭どまんぢうが並んで居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
こたへて、茶色ちやいろのスエエタアをた、まるまるふとつたからだをよちよちさせながら、敏樹としきべつちひさなまりげた。が、見當けんたうはづれて、それはをつとよこへそれてしまつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
てゐる旅行りよこう着物きものが、わゝけるほどにはやはるたびも、すでに春深はるふかくなつて、道傍みちばた雜草ざつそうのようにいてゐる野茨のばらはなが、にほつてかんぜられる、といふ意味いみです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
さうして日本人にほんじん衣服いふく絹物きぬもののぞいたほかのものはこと/″\外國ぐわいこくから輸入ゆにふされるものである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
ソレカラ私は誰にも相談せずに、毎晩掻巻かいまき一枚いちまい敷蒲団しきぶとんも敷かず畳の上に寝ることを始めた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
多くの人々は、たいてい、ソラ火がまわったというので、のみ着のままにげ出したようです。
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ちぶれはてた花前は、さだめてそぼろなふうをしているかと思いのほか、かみをみじかくり、ひげをきれいにそって、ズボンにチョッキもややあかぬけのしたのをてる。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
児をいつけたるひもは藤のつるにて、たる衣類は世の常の縞物しまものなれど、すそのあたりぼろぼろに破れたるを、いろいろの木の葉などを添えてつづりたり。足は地にくとも覚えず。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
たとえばころもを着るにも、縞柄しまがらからい方からようにいたるまで一々明白はっきりした意思を表示し、かつこれをつらぬかんとすれば、たいていの仕立屋したてやまたは細君さいくんは必ず手に余すであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しらぬひ筑紫つくし綿わたにつけていまだはねどあたたけく見ゆ 〔巻三・三三六〕 沙弥満誓
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
の方にうるはしき声して、此の軒しばし恵ませ給へといひつつ入り来るを、あやしと見るに、年は廿はたちにたらぬ女の、顔容かほかたち三一かみのかかりいとにほひやかに、三二遠山ずりの色よききぬ
はなししてところへ、突然とつぜんはやしなかから、半外套はんぐわいとうた、草鞋わらじ脚半きやはんの、へんやつた。
大久保おほくぼ出発前しゆつぱつぜんよりも一そうあせつてゐたが、おとづれたのは、やはり竹村たけむらであつた。かれはロンドン仕立じたて脊広せびろこんでゐただけで、一ねんまへかれすこしもかはつたところはなかつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
狩衣かりぎぬさむらひ二人ふたりふもとの方に下りしは早や程過ぎし前の事なりと答ふるに、愈〻足を早め、走るが如く山を下りて、路すがら人に問へば、尋ぬる人は和歌の浦さして急ぎ行きしと言ふ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
あたかもその時帳場の横で黒縮緬くろ羽織はおり、鳩鼠色の紐を結んで居たのは小歌で、貞之進は何か云いたかったが云う折でもなく、又云うことも出来ぬのでそのまゝ下足番の所へ行った。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
もなく這入はひつてたのは、一にんたかそうであつた。あかつきやぶれた法衣ほふえて、ながびたかみを、まゆうへつてゐる。かぶさつてうるさくなるまでつていたものとえる。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
私は黒木綿の紋付もんつきを着てうれしそうに写っているが、これは下級生の紋付をして行ったもので母もその当時は、卒業出来るのなら工面くめんしてでも紋付を造ってやったにと云い云いした。
私の先生 (新字新仮名) / 林芙美子(著)