みな)” の例文
さればそれより以前には、浅草から吉原へ行く道は馬道のほかは、みな田間でんかんの畦道であつた事が、地図を見るに及ばずして推察せられる。
里の今昔 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
みながそれをると、子安貝こやすがひではなくてつばめ古糞ふるくそでありました。中納言ちゆうなごんはそれきりこしたず、氣病きやみもくははつてんでしまひました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
女中ねえや、お手柔てやはらかにたのむぜ。」と先生せんせい言葉ことばしたに、ゑみわれたやうなかほをして、「れた證據しようこだわよ。」やや、とみなかほる。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
世に越後の七不思議なゝふしぎしようする其一ツ蒲原郡かんばらこほり妙法寺村の農家のうか炉中ろちゆうすみ石臼いしうすあなよりいづる火、人みな也として口碑かうひにつたへ諸書しよしよ散見さんけんす。
通常つうじょう人間にんげんは、いいことも、わるいこともみな身外しんがいからもとめます。すなわ馬車ばしゃだとか、書斎しょさいだとかと、しかし思想家しそうか自身じしんもとめるのです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
女等をんならみな少時しばし休憩時間きうけいじかんにもあせぬぐふにはかさをとつて地上ちじやうく。ひとつにはひもよごれるのをいとうて屹度きつとさかさにしてうらせるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
上野うへの戦争後せんそうご徳川様とくがはさま瓦解ぐわかい相成あひなりましたので、士族しぞくさんがたみな夫々それ/″\御商売ごしやうばいをお始めなすつたが、おれなさらぬからうまくはまゐりませぬ。
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
いま敵國てきこくふかをかして、邦内はうない騷動さうどうし、士卒しそつさかひ(一七)暴露ばくろす。きみねてせきやすんぜず、くらうてあぢはひあましとせず。百せいめいみなきみかる。
三味線しゃみが無いでな。さっぱりどうも」ふと思いついた様に、「どや、みなで一丁散財に行こら。お初つぁん。お前も一緒に来ィな」
俗臭 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
初期の通信は、前にも言った通りみな細字ほそじで書かれ、その書体も均一で、Doctor, The Teacher, と署名してあった。
店の中の客は景気づいてみな高笑いした。小栓も賑やかな道連れになって懸命に咳嗽をした。康おじさんは小栓の前へ行って彼の肩を叩き
(新字新仮名) / 魯迅(著)
わたしときよりまぐれをおこすはひとのするのではくてみなこゝろがらのあさましいわけがござんす、わたし此樣こんいやしいうへ貴君あなた立派りつぱなお方樣かたさま
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ぼくはこんなことを、日本選手でもあり、立派な紳士しんし淑女しゅくじょでもあるみなさんに、お話するのは、じつに残念であるが、むを得ん。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
秋七月布政使ふせいし張昺ちょうへい謝貴しゃきともに士卒を督してみな甲せしめ、燕府を囲んで、朝命により逮捕せらるべき王府の官属を交付せんことを求む。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
松はつらいとな、人ごとに、みないは根の松よ。おおまだ歳若な、ああひめ小松こまつ。なんぼ花ある、うめもも、桜。一木ざかりの八重一重……。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
これが今日こんにちおほくの石器せつき發見はつけんされる理由りゆうひとつでありまして、おかげ私共わたしどもみなさんととも石器せつきさがしにつても、獲物えものがあるわけです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
まえにものべたとおり、こちらの世界せかいつくりつけの現界げんかいとはことなり、場所ばしょも、家屋かおくも、また姿すがたも、みな意思おもいのままにどのようにもかえられる。
サア、みな水兵ものどもた/\、大佐閣下たいさかくかのおかへりだよ、それに、めづらしい賓人おきやくさんと、可愛かあいらしい少年せうねんとが御坐ござつた、はや御挨拶ごあいさつまうせ/\。
此時このとき堂上だうじやうそう一齊いつせい合掌がつしやうして、夢窓國師むさうこくし遺誡ゐかいじゆはじめた。おもひ/\にせきつた宗助そうすけ前後ぜんごにゐる居士こじみな同音どうおん調子てうしあはせた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「わたくしはそれをみなさんに勸めてゐるのです。片つ端から作者部屋に抛り込んで置くうちには、一人ぐらゐ物になるでせう。」
八歳の時の憤激 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
幼児をさなごたちはみな十字架クルス背負しよつて、しゆきみつかたてまつる。してみるとそのからだしゆ御体おんからだ、あたしにけてくださらなかつたその御体おんからだだ。
どうにも仕方しかたがありませんでした。それでみな相談そうだんして、そのくせむまでしばらくのあいだ、王子を広いにわじこめることになりました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
動揺してゐる日常語によつて、学術上の概念を定めたので、歌の様態の上の幾種かの型は、所謂三歌式以来、各家みな術語を異にして居る。
わたしりあのSさんのやうにみなさんにもうおわかれです、でもねわたしいまおほきなおほきな丘陵きうりようのやうに、安心あんしんしてよこたはつてゐますのよ。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
天下てんか役人やくにんが、みな其方そちのやうに潔白けつぱくだと、なにふことがないのだが。‥‥』と、但馬守たじまのかみは、感慨かんがいへぬといふ樣子やうすをした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
みなさん!』とつてあいちやんは、つゞけやうとして氣遣きづかはしげにまはりを見廻みまはし、『さア、これで解散かいさんしやうぢやありませんか!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
すると、その様子などには目もくれないで、ひとり無念そうにたたずんでいた孫兵衛は、じゅうみな、有村の自殺に気をとられている隙をみて
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おそらくこの辺の家は、五十年以上、中には百年二百年もたっているのがあろう。が、建物の古い割りに、どこの家でも障子しょうじの紙がみな新しい。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
みなさんこんないろ/\のわけをおはなししたら、われ/\がおたがひに、いまそだつてゐるすべての老樹ろうじゆ名木めいぼくを、ます/\大事だいじにして
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
「よくまあ無事に生きていたなあ。貴様からの無電が艦隊にはいって来たときには、それを聞いてみな泣いてよろこんでいたぞ」
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
御邊ごへん可惜あたら武士を捨てて世をのがれ給ひしも、扨は横笛が深草の里に果敢はかなき終りをげたりしも、起りを糾せばみな此の重景が所業にて候ぞや
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
しかし意味ありげな大御所のことばを聞いて、みなしばらくことばを出さずにいた。ややあって宗が危ぶみながら口を開いた。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
モンタギュー、其方そちは、この午後ひるごに、まうかすこともあれば、裁判所さいばんしょフリータウンへ參向さんかうせい。あらためてまうすぞ、いのちしくば、みな立退たちされ。
すると、この頃になつて、船橋氏は自分の子供が、西洋人は汽車で果物を食べると、核子たねみな窓から捨てる事になつてゐる。
たゞされしかば富右衞門の女房にようばうみね其子城富は申に及ばず親族しんぞくに至る迄みな大岡殿の仁智じんちを感じ喜悦きえつなゝめならずことさらに實子城富は見えぬなみだ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そんなものはみな自分が死んだ跡で、いつか亡びて無くなってしまうのである。自分が遺言として残して置くのは、一ぺんの詩でなくてはならない。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
そのわななきはいよいよ間遠まどおになって、ついに、はっきり明けはなれた一日の、ものみなゆめをさます疑いもない光にひたされて消えてしまった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
この男が、いろいろ指図さしずをしているが、他はまるで従者のように、素直に云うことをきいている。分配が終ると、みなそれぞれの方角に歩き出した。
女強盗 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
『わたし、フロックコート着る。東京に住む。みなあなたのためです』と、さすがにヘルンも夫人に愚痴ぐちをこぼしている。
遂に望みを達し得ざるのみならず、舎弟は四肢しし凍傷とうしょうかかり、つめみな剥落はくらくして久しくこれに悩み、ち大学の通学に、車にりたるほどなりしという。
先生せんせいは、だい一が健康けんこうで、つぎは、正直しょうじきで、まじめであれとつねにわたしたちにいわれました。みなさんも記憶きおくがあるでしょう。
生きぬく力 (新字新仮名) / 小川未明(著)
というような現実曝露ばくろは決して見受けない。みな才子さいし佳人かじんである。但し親が町家か百姓で肩書のない場合には新聞社の方で然るべく計らってくれる。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
子路が今までに会った人間のえらさは、どれもみなその利用価値の中に在った。これこれの役に立つから偉いというに過ぎない。孔子の場合は全然違う。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
嗚呼ああ、先生は我国の聖人せいじんなり。その碩徳せきとく偉業いぎょう、宇宙に炳琅へいろうとして内外幾多の新聞みな口をきわめて讃称さんしょうし、天下の人の熟知じゅくちするところ、予が喋々ちょうちょうを要せず。
『おまへはじめてつたのかい、それがみなさんのよくふ「いのち」(生命)といふものですよ。おまへたちがおほきくなるのもみんなそのちからなんですよ。』
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
特務曹長「閣下の勲章はみな実に立派であります。私共は閣下の勲章をあおぎますごとに実に感激かんげきしてなみだがでたりのどが鳴ったりするのであります。」
饑餓陣営:一幕 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彼等かれらみな、この曇天どんてんしすくめられたかとおもほどそろつてせいひくかつた。さうしてまたこのまちはづれの陰慘いんさんたる風物ふうぶつおなじやうないろ著物きものてゐた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
網形の押紋有る土噐片、骨器のさりたる大鯛おほだいの頭骨、浮き袋の口とおもはるる角製の管、みな人類學教室じんるゐがくけうしつ藏品ざうひんなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
すなわち国家風教ふうきょうたっと所以ゆえんにして、たとえば南宋の時に廟議びょうぎ主戦しゅせん講和こうわと二派に分れ、主戦論者は大抵たいていみなしりぞけられてあるいは身を殺したる者もありしに
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ものたましひがあるとの想像さうざうむかしからあるので、だい山岳さんがく河海かかいより、せうは一ぽんくさ、一はなにもみなたましひありと想像さう/″\した。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)