はる)” の例文
そして、大空おおぞらからもれるはるひかりけていましたが、いつまでもひとところに、いっしょにいられるうえではなかったのです。
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
の一のかはをがれたために可惜をしや、おはるむすめ繼母まゝはゝのために手酷てひど折檻せつかんけて、身投みなげをしたが、それのちこと
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
雜木林ざふきばやしあひだにはまたすゝき硬直かうちよくそらさうとしてつ。そのむぎすゝきしたきよもとめる雲雀ひばり時々とき/″\そらめてはるけたとびかける。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
葉末はずゑにおくつゆほどもらずわらふてらすはるもまだかぜさむき二月なかうめんと夕暮ゆふぐれ摩利支天まりしてん縁日ゑんにちつらぬるそであたゝかげに。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
またはる殿デンに満つは間違であらう。ここのはる殿デンは、論語に「暮春には春服既に成り云々」とある場合などと同じく、春は殿の形容詞である。
閑人詩話 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
それは、お日様ひさまあたたかっているのをたり、雲雀ひばりうたいたりして、もうあたりがすっかりきれいなはるになっているのをりました。
勅撰集ちよくせんしゆう第一番だいゝちばん古今集こきんしゆうはるのはじめにあるものといへば、そのうちでも第一番だいゝちばんうたといふことになるから、自然しぜんひとは、それをおもます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
本當ほんたう有難ありがたいわね。やうやくのことはるになつて」とつて、れ/″\しいまゆつた。宗助そうすけえんながびたつめりながら
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
小櫻姫こざくらひめ通信つうしん昭和しょうわねんはるから現在げんざいいたるまで足掛あしかけねんまたがりてあらわれ、その分量ぶんりょう相当そうとう沢山たくさんで、すでに数冊すうさつのノートをうずめてります。
にわ若草わかくさ一晩ひとばんのうちにびるようなあたたかいはるよいながらにかなしいおもいは、ちょうどそのままのように袖子そでこちいさなむねをなやましくした。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それからまた一ねんたって、二めのはるおとずれてくる時分じぶんには、保名やすなむすめあいだにかわいらしい男の子が一人ひとりまれていました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「しつ、あななかたまごみつけてゐるんだよ。そしてね、來年らいねんはるになつてたまごがかへると蜘蛛くもはち子供こども御飯ごはんになるのさ」
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そんなのをると、もうはるたのかとおもはれます。蝋梅ろうばいはもと支那しなさんですが、はや我國わがくに移植いしよくされおほくは庭木にはきとして灌木状かんぼくじようをしてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
みぎごとくし三月四月五月をはるとし、六月七月八月をなつとし、九月十月十一月をあきとし、十二月一月二月をふゆとするなり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
うららかなはる日永ひながを、あなからひだした田螺たにしがたんぼで晝寢ひるねをしてゐました。それをからすがみつけてやつてました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
明治めいぢ三十五ねんはるぐわつ徳島とくしまり、北海道ほくかいだう移住いぢゆうす。これよりき、四男しなん又一またいちをして、十勝國とかちのくに中川郡なかがはごほり釧路國くしろのくに足寄郡あしよろごほりながるゝ斗滿川とまむがはほとり牧塲ぼくぢやう經營けいえいせしむ。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
はるになつてゆき次第しだいけた或日あるひ墓場はかばそばがけあたりに、腐爛ふらんした二つの死骸しがい見付みつかつた。れは老婆らうばと、をとことで、故殺こさつ形跡けいせきさへるのであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ひだりはうには、六甲ろくかふ連山れんざんが、はるひかりにかゞやいて、ところ/″\あか禿げた姿すがたは、そんなにかすんでもゐなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
はるたといつては莞爾につこりなにたといつては莞爾につこり元来ぐわんらいがあまりしつかりしたあたまでないのだ。十歳じつさいとき髪剃かみそりいたゞいたが、羅甸ラテン御経おきやうはきれいに失念しつねんしてしまつた。
しんたのむねからちあげられて、すこしくもったそら花火はなびがはじけたのは、はるすえちかいころのひるでした。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
おくからのこえは、このはるまで十五ねんながあいだ番町ばんちょう武家屋敷ぶけやしき奉公ほうこうあがっていた。春信はるのぶいもうと梶女かじじょだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
家は長崎で、反物たんものや装身具や支那画などの長崎骨董ながさきこっとうを持って、関西から江戸の花客とくいを廻り、あらかた金にすると、はるかりのように、遥々な故国ここくへ帰ってゆくのである。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山田やまだともかず石橋いしばしとも付かずでお茶をにごしてたのです、其頃そのころ世間せけん持囃もてはやされた読物よみものは、はるのやくん書生気質しよせいかたぎ南翠なんすゐくんなんで有つたか、社会小説しやくわいせうせつでした、それから
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
はるまけてものがなしきにさけてぶきしぎにかむ 〔巻十九・四一四一〕 大伴家持
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それははるよいでありました。坊さんは法事ほうじへいってるすでした。法師はじぶんの寝間ねまの前の、えんがわへでて、きなびわをひきながら、坊さんの帰りを待っていました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
たとへば、緩漫なまのろふゆしりへにはなやかなはるめがるのをて、血氣壯けっきさかんわか手合てあひかんずるやうなたのしさ、愉快こゝろよさを、つぼみはな少女をとめらと立交たちまじらうて、今宵こよひ我家わがやりゃうせられませうず。
はる野路のぢをガタ馬車ばしやはしる、はなみだれてる、フワリ/\と生温なまぬるかぜゐてはなかほりせままどからひとおもてかすめる、此時このとき御者ぎよしや陽氣やうき調子てうし喇叭らつぱきたてる。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
尊ぶとこそ云へり今一錢二錢の袖乞そでごひしても心きよきがいさぎよし人間萬事塞翁が馬ぢやまたよきはるに花をながめる時節もあらん斷念あきらめよと夫婦互に力をあひうき物語ものがたりに時移りしにやがねぐら
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
火星くわせいにはみづすくない。もしうみがあるとすれば、はるゆきどけのときだけできるあさい海うみだ。)
さてまへにいへる渋海しぶみ川にてはる彼岸ひがんころ、幾百万の白蝶はくてふ水面すゐめんより二三尺をはなれてもすれあふばかりむらがりたるが、たかさは一ぢやうあまり、両岸りやうがんかぎりとして川下より川上の方へ飛行とびゆく
女子教育上ぢよしけういくじやう意見いけんとしては別段べつだん申上まをしあげることも御在ござませんが、わたくしが一昨年さくねんはる女子英學塾ぢよしえいがくじゆくひらいてから以來いらい種々いろ/\今日こんにち女子ぢよしすなは女學生ぢよがくせいつい經驗けいけんしたことがありますから
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
てるさんは向ひの仏師屋ぶつしやの子で、私より二つの歳上としうへでしたが、背丈は私の方が高いのでした。おはるさんはその人のねえさんでした。隣の藍玉屋あゐだまやには、よりさんと云ふ子がありました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「まあ、そうでございますか、そしたらおはるどんは運がよかったのでございますね」
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
見兼ねて、妹のおはるがあっしへ頼むんです。何とか銭形の親分さんにお願いして金の茶釜を見付けて下さい。兄が佐五兵衛に責めさいなまれるのを見ちゃいられません——と涙を流して
或年のはるぼくは原稿の出来ぬことにすくなからず屈託くったくしていた。滝田くんはその時ぼくのために谷崎潤一郎くんの原稿をしめし、(それは実際じっさい苦心くしんの痕の歴々れきれきと見える原稿だった。)大いにぼく激励げきれいした。
滝田哲太郎君 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
はるうら/\てふともあそぶやはな芳野山よしのやまたまさかづきばし、あきつきてら/\とたゞよへるうしほ絵島ゑのしままつさるなきをうらみ、厳冬げんとうには炬燵こたつおごり高櫓たかやぐら閉籠とぢこもり、盛夏せいかには蚊帳かや栄耀えいえう陣小屋ぢんごやとして
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
また暖房だんぼうのあるためにふゆ館内かんないはるのようにあたゝかすごすことが出來できます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
そうして受取り人には田中はるという極く確かな女を出すからよろしく頼む。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのはるきたるごとに余に永遠希望の雅歌を歌いくれし比翼ひよくママ有する森林の親友も、その菊花かんばしき頃巍々ぎぎとして千秋にそびえ常に余に愛国の情を喚起せし芙蓉ふようの山も、余が愛するものの失せてより
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
『絵本はるにしき』、『絵本青楼美人合せいろうびじんあわせ』等について眺むるところあらば
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
矯首はじめて見る故園の家黄昏こうこんる白髪の人弟を抱き我をまつはるまたはる
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
A ウン、あれはうさ。『きみ電車でんしやまる今朝けさはる』さ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
「わしらもはア、このはるア、日振ひぶりなんぞはよすべいよ」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
浅間の麓高原から松の林は黒しはるともなし
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
はる馬醉木あせびに、蝦夷菫えぞすみれかざしぬ、はなを。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
はるの、ゆめひとつはかくなりき。
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
そは早きはるはなよりもあたたかし。
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
ことごとくはるたけなわの景色であった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ゆくはるあきにもたる一夜ひとよかな
荷風翁の発句 (旧字旧仮名) / 伊庭心猿(著)
ある はるの ことでした。
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)